【香川密着・第1回】ハットトリックから1年、香川の現在地

2014年02月26日 田嶋コウスケ

「シンジはもっと良くなる」と言ったファーガソンが…

ウェルベック、ルーニーとの流れるような連係から、技ありのチップシュートで3点目。1年前のノーリッジ戦での歴史的なハットトリックは、明るい前途を予感させたが…。 (C)Getty Images

 2013年3月2日、香川真司は歴史的な偉業を成し遂げた。28節のノーリッジ戦、アジア人として初めてプレミアリーグでハットトリックを達成したのだ。

 それから1年。明るく開けたはずのその前途に、暗雲が立ち込めている。

 マンチェスターを拠点に活動する田嶋康輔氏による『香川真司密着レポート』、記念すべき連載の第1回は、エポックメーキングなハットトリックを起点に、運命が急展開したこの1年の激動を改めて総括しながら、日本代表MFの“いま”を描き出す。

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 その時は、突然やってきた。

 2013年3月2日、12-13シーズンのプレミアリーグ28節ノーリッジ戦。ウェイン・ルーニーからリターンパスを受けた香川真司は、飛び出してきたGKマーク・バンの位置を確認し、右足でチップシュート。ボールはきれいな弧を描いてゴールに吸い込まれた。プレミアリーグで、アジア人初となるハットトリック。得点後、7万人を超すオールド・トラフォード(マンチェスター・ユナイテッドの本拠地)の住人たちは、割れんばかりの歓声を送った。

 いまから約1年前のあの日──。監督のアレックス・ファーガソンは顔をくしゃくしゃにして喜び、香川も、
「まさかハットトリックを達成できるとは思わなかったのでうれしい。なかなか結果を残せていなかったから、やっと勝利に貢献できた」
 と安堵の笑みを浮かべた。左膝の怪我で2か月間も離脱する悔しさを乗り越え、サポーターにも英国人記者にも名門ユナイテッドの一員としてようやく認められるようになったのが、あの歴史的なハットトリックだった。

 プレミアリーグで1年間を戦ったことで、飛躍のための土台づくりも完了。
「来シーズンのシンジは、もっと良くなる」
 と言う“サー・アレックス”の言葉通り、誰もがマンチェスターでの香川に明るい未来を思い描いていた。しかし、71歳(当時)の御大が引退を決意し、新指揮官にデイビッド・モイーズが就くと、日本代表MFの雲行きは怪しくなり始めてしまう。

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