ついにミランも中国資本に…セリエA「外資参入」の背景とは?

2017年04月14日 片野道郎

いずれも経営が立ち行かなくなり、身売りを“強いられる”。

2011年のローマ(左上)を皮切りに、インテル(右上)、ボローニャ(左下)と立て続けに外国資本によって買収された。そしてついにあのミラン(右下)までもが…。 (C) Getty Images

 2011年のローマを皮切りに、ボローニャ、インテル、パレルモが外国資本に買収され、現地時間4月13日にはミランが中国コンソーソアムに買収された。
 
 クラブが身売りをするのは、ほとんどの場合が経営難からだ。入場料やTV放映権、マーケティングなどから得られる売上高で、選手の人件費や補強費などの運営コストを賄いきれずに赤字経営が常態化し、その赤字を移籍収支やオーナーの資金で穴埋めできなくなった時にクラブは売りに出されるわけだ。
 
 これはローマやミラノ勢、他国ではパリSGやバレンシアの事例を見れば明らかだろう。いずれも経営が立ち行かなくなり、身売りを"強いられ"ている。
 
 買い手が名乗りを上げるのは、そのクラブに成長余力が残されており、投資に見合った利益を回収できる可能性があるからだ。その点から言えば、セリエAには投資意欲をかき立てる要素がいくつかある。具体的には、スタジアム整備やマーケティングなどコマーシャル分野の拡大を通した売上高アップによる競争力の強化、そして欧州カップ戦進出の可能性だ。
 
 皮肉な話だが、スタジアム整備の遅れ、コマーシャル分野の停滞は近年のイタリア・サッカー低迷の原因となってきた要素でもある。しかし、昨年スタジアム建設促進法案が整えられ、クラブを含む民間セクターによるスタジアム建設が進めやすくなったことで、そのネックが一部とはいえ解消できる可能性が出てきた。
 
 ローマのスタジアム建設計画がやっとローマ市の認可を受け、フィオレンティーナも新スタジアムの建設計画を発表するなど、クラブレベルでも動きが出始めているのは象徴的だ。
 
 そのローマは、セリエAにおける外国資本参入の実質的な第1号だった。前オーナーのセンシ家がスクデット獲得(2001年)のためなどに資産を使い果たしてクラブを支えきれなくなり、経営が実質的な銀行管理下に入ったのが09年。その2年後に、ボストンに本拠を置くイタリア系アメリカ人の投資家グループがクラブを買収し、現在に至っている。
 

次ページアメリカ的ビジネス手法を取り入れたローマは経営基盤が安定。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事