【徹底分析】弱小マケドニアにも大苦戦…アッズーリ新監督の戦術は時代遅れ?

2016年10月14日 片野道郎

スペインを相手に完全に自陣に引きこもる。

EURO2016後からトリノ監督からイタリア代表監督に転身したヴェントゥーラ。早くもその手腕に疑問符が投げ掛けられている。写真:Alberto LINGRIA

 結果はまずまず、内容はダメダメ――。
 
 ジャンピエロ・ヴェントゥーラ新監督の下、ロシア・ワールドカップに向けて新たなスタートを切ったイタリア代表の戦いぶりを端的に表現するとこうなる。
 
 今回の国際Aマッチウィークに行われたワールドカップ欧州予選でイタリアは、10月6日にスペインからホームで1-1の引き分けをもぎ取り、続く9日のアウェーのマケドニア戦ではロスタイムの決勝弾で3-2の勝利を収めて、2試合合計で勝点4を確保した。予選3試合を終えて勝点7を稼ぎ、スペインと並んでグループGの首位に立っている。
 
 こう書くと、ヴェントゥーラ新体制の船出はまずまず悪くないようにも見える。しかし、この2試合でアッズーリが見せた戦いぶりは問題だらけ。つい3か月前のEURO2016でアントニオ・コンテ(現チェルシー監督)が率いたチームとメンバーがほぼ同じであるにもかかわらず、様々な戦術的な問題が山積しているのだ。
 
 スペイン戦は、イタリアにとって「絶対に負けられない」どころか「勝つべき」試合だった。ワールドカップ欧州予選は、本大会に直接進めるのが各グループ1位のみで、2位はプレーオフに回るという厳しいレギュレーション。プレーオフ行きのリスクを避けて1位抜けを目指すには、直接のライバルであるスペインにホームで勝っておく必要があった。
 
 しかし、ヴェントゥーラ監督が採った戦術は、EUROでコンテがスペインに2-0で完勝した時のそれとはコンセプトがまったく異なる、極めて消極的なものだった。前線からのハイプレスを放棄してスペインにボールを持たせ、完全に自陣に引きこもったのだ。
 
 その結果、前半のボール支配率はなんと27%。たしかに、厚い守備ブロックで中央を固めて自陣2ライン(DFとMF)間にスペースを与えず、相手をサイドに追い込んでボールを後ろに戻す以外の選択肢を奪うというロープレスの組織的連携は、完璧に近かった。終始押し込まれながら前半に許したシュートはわずか2本。危険な場面はゼロだった。
 
 しかし、完全に自陣深くに押し込まれているため、ボールを奪ってもすぐにスペインのハイプレスに晒されて、やみくもにロングボールを蹴るか、パスが3本と繋がらずに終わるかのどちらか。イタリアが自陣からボールを持ち出して敵陣に攻め込んだ回数は、前半の45分間でたったの3回、シュートはゼロだった。

次ページ内容的には1-1よりは2-0のほうがずっと相応しい試合だった。

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