順調そうに見える原口元気が抱えるジレンマ。「ストライカーの役割を諦めたわけじゃない」

2016年10月04日 寺野典子

次なるステップはFWとしての成功を掴めるか?

2-0で勝利したハンブルク戦後の一コマ。原口はヘルタ・ベルリンでは、チームプレーヤーとして確固たる地位を築いた。(C) Getty Images

 上位争いをしながらも終盤に失速してしまった昨季のヘルタ・ベルリンだったが、今季はバイエルン・ミュンヘンに敗れたものの6節終了時点で2位につけ好調だ。
 
 下位に低迷するハンブルクをホームに迎えた10月1日の6節でも、原口元気は先発出場を果たし、そのポジションを確固たるものにしている。しかしチームは2-0と勝利を収めたものの、ゴールは決められなかった。
 
「自分がやるべき守備やボールをつなぐところは問題なくやれている。もちろんそれは昨シーズンも出来ていたことだから、今シーズンはその先の一個、何かやることを目指しているんで……。それが出来ないと悔しいですね」
 
 欧州でプレーする日本代表選手のほとんどが、試合出場から遠ざかるなか、順調にチームからの信頼を掴み、成長を遂げているように見える原口ではあるが、「現実は試行錯誤の毎日だ」と話す、その理由について考えてみた。
 
 この春、インタビューした際には、「まずは出場機会を得るために、自分の得意なプレーでなくチームのために仕事ができることを示さなくちゃいけない」と話していた。その意識の変化が、彼の存在価値を示す結果となったのだ。確かに自身の最大の武器でもあるドリブルを披露する場面は少なくなったが、攻守に渡る献身的なプレーで評価を高めた。
 
 浦和レッズ時代に見せた奔放で強引なプレーは影をひそめ、組織の一コマとして、機能する姿は原口の新たな可能性を見せてくれた、そんな"仕事"を果たしたにからこそ、代表でのボランチ起用にもつながったのだろう。そのうえで、当時から、「その先にあるストライカーとしての役割を果たすことを諦めたわけじゃない」と話し、点取り屋としての活躍を虎視眈々と見据えていたのも事実だ。
 
 そして迎えた今季も左アウトサイドで先発起用が続いている。
 
 しかし、9月24日のフランクフルト戦では、ほとんどパスが来ず、逆サイドで展開される攻撃を見守ることしかできなかった。
 
「ボランチに対してパスを要求はしているけれど、『左足は使えないから』と言われてしまう。それでもあきらめずに要求し続けるしかない」
 
 このフランクフルト戦は、3-3の引き分けに終わっている。チーム内には内容の修正以上に「勝っているんだから、このままで良い」という空気も漂うだろう。だから、原口の要求はすんなり受け入れてもらえないかもしれない。しかし、それでも……、「言い続けるしかない」と原口は言うのだ。
 

次ページ現在の原口を見て思い出されるシュツットガルト時代の岡崎慎司。

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