【金田喜稔のリオ五輪総括】乏しかった指揮官の「発想力」。東京五輪に向け、育成年代の監督の“スタンス”が課題に

2016年08月11日 サッカーダイジェスト編集部

1-0でOKという戦い方。“またも”なぜ、トドメを刺しにいかなかったのか?

矢島が先制点を決め、日本は1-0の勝利を収めた。この1試合に限れば、評価できる内容だったが…。 写真:JMPA/小倉直樹

 今回のスウェーデン戦は、システムが同じ4-4-2で、互いにスペースを消し合いながらサイドから打開しようと試みて、1対1での睨み合いが続いた。いわば消耗戦といえた。
 
 そのため、前半は両チームともにゴール前までボールを運ぶシーンは限られた。ただ日本は組織力を生かして、徐々にボールを奪って仕掛ける回数を増やしていった。このチームの特長といえる、人と人がかかわり合いながらパスワークを生かして何度かチャンスを作り、そして大島の積極的な仕掛けから矢島の先制ゴールが決まった。
 
 他会場のコロンビア-ナイジェリア戦の試合経過について、どのように情報を管理していたかは気になるところだ。ただ、手倉森監督もあくまでこの試合に勝つことのみ集中していたのかもしれない。
 
 グループリーグを突破するためには、1点リードでは心許ない。実際、バランスを崩してまで点を取りにくるスウェーデン相手に、トドメの2点目を狙える隙はあった。それでも、手倉森監督はあくまでも、この1点を守り切ろうとする采配を見せた。
 
 2試合連続得点中の浅野、オフザボールの質の高い動きからジワジワと相手の体力を奪っていた興梠、2トップを代えて、守り重視の布陣にシフトした。結果的に1-0の勝利を収めた。スウェーデンも予選を1位突破している「欧州王者」であり実力はあるのだから、この1試合のみ、90分に関して言えば十分評価できる内容だった。
 
 1-0でOKというのは、このチームらしいとは言えた。それに大会を通じて徐々に尻上がりに調子を上げて、最後は勝利を収められた。「よくやった」という論調が大半になるだろう。
 
 それでも日本は1勝1分1敗の勝点4で、グループリーグ敗退に終わったんだ。その点について、やはり今一度シビアに考えてみたいと思う。
 
 選手たちは力を出し切ったし、これからの人生でも、この経験が生きるはずだ。お疲れ様と言いたい。一方、手倉森監督はスウェーデン戦後、日本サッカーに何かを残せたのではないか、といったことをコメントしていた。しかし個人的には、この3試合を通じて、監督が目先の結果にこだわってきたために、終わってみれば"なにも残せなかった"とも感じている。
 

次ページ選手たちに植え付けられたのは、「負けてはいけない」というマインド。この3試合、同じような受け身のメンタルが続いた。

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