【識者の視点】岡崎、原口らが貫くクラブでのスタンダード。2次予選の相手にも欧州組が重視される理由

2016年03月28日 加部 究

力の離れた相手に隙を作らず、ハードワークを続けるのは容易ではない。

ドイツで好調を維持し、ハリルホジッチ監督の評価を高めた原口。プレースタイルも渡独後に変化を見せている。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 4年に1度のワールドカップがトレンド転換を確認する場だったのは、せいぜい1980年代までだろう。
 
 亡くなったヨハン・クライフがキャプテンとして統率するオランダがトータルフットボールで席巻した1974年西ドイツ大会は、世界中に強烈な衝撃を与えた。ただしそれも欧州チャンピオンズカップ(当時)の映像が他大陸では入手し難い事情があったからで、当然オランダ代表の軸を成すアヤックスは大会前から実践済みだった。当たり前のことだが、21世紀の現在は、代表チームから新しい戦術やアプローチが発信されることはない。常に進化を誘導しているのはクラブだ。
 
 一方次回のワールドカップ開催地はロシアだが、それでも日中の最高気温は20度を超える。現在欧州のトップクラブが繰り広げるようなスピーディで激しいプレッシング合戦は回避される可能性が高い。実際前回ブラジル大会で5バック系の戦術が幅を利かせたのは、やはり代表チームの強化スケジュールが十分に確保できず、6~7月開催という条件も考慮すると、どうしてもリスク回避が必然の方向性となった。
 
 ただし代表チームは、ワールドカップ本戦だけを想定して活動するわけではない。ブロックを固めて最終ラインでようやくボールを跳ね返すようなスタイルでは、国際基準へは到達できない。特に日本代表の選手たちの資質を考えても、堅守速攻に活路を見出せるはずもなく、おそらくヴァイッド・ハリルホジッチ監督の悩みもそこにある。
 
 同監督は、先日のアフガニスタン戦を「美しい勝利」と賞賛した。アフガニスタンは日本のペナルティエリアに1度も侵入できず、クロスを上げたのも1度だけだった。ハリルホジッチ監督を上機嫌にしたのは、「忘れることはない」というスコアレスドローに終わったシンガポール戦のトラウマを少なからず拭い去ったこともあるが、自ら「最も難しい」と評す「前へのプレス」を勤勉に継続できことだろう。
 
 生真面目な日本代表選手たちは、全員が指揮官の要望通りにアグレッシブに取り組む決意を込めて戦った。それを「日の丸をつけた責任」と言うのは簡単だが、これだけ力の離れた相手に、ここまで隙を作らずハードワークを続けるのは決して容易いことではない。ぞしてそれはJリーグのピッチを見ればなおさらである。
 

次ページ欧州シーンの映像が溢れるなか、Jはドメスティックなトレンドへ足並みを揃えている。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事