【サッカーダイジェストの視点】内容よりも結果――。勝利に徹した手倉森ジャパンの潔さが勝点3に結びつく

2016年01月14日 本田健介(サッカーダイジェスト)

試合の入り方はまさに理想的だったが……。

身体を張った守備を見せる遠藤。一時はインフルエンザから復帰したばかりで欠場も考えられたが、終盤は守備で存在感を放った。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

「ハラハラドキドキの大会になる。まさしく予言どおり」
 
 試合を終え、記者団の前に現われた手倉森監督の第一声が五輪最終予選の初戦・北朝鮮戦を端的に物語っていた。
 
 ゲームの入り方はまさに理想的だった。「北朝鮮に得意なロングボールを蹴らせないためにも、プレッシャーかけたい」(遠藤)と、積極的にボールを奪いに行き、相手のミスを誘発させる。そして5分には入念に準備してきたCKから植田が先制点を奪った。
 
 アシストした山中は「狙いどおりの形」と振り返り、CBを務めた岩波も「今日はセットプレーで点を奪って1-0で勝つというゲームを目指していた」と口を揃える。
 
 ただ、「最初に点を取れて良かったが、逆に取らなかったらもう少し自分たちのサッカーができたのかなという気もする。点を取って、意識が一気に守備にいってしまった」(手倉森監督)と、その後、日本はラインをズルズルと下げ、幾度となくピンチを迎えた。
 
 早い時間帯での先制点が選手たちから前へ仕掛ける意識、ボールをつなぐ意識を奪ってしまったのだろう。それでも北朝鮮の猛攻を日本は撥ね返し続けた。
 
 その背景には「押し込まれた時に、みんな焦っていたわけではなく、意外と落ち着いて、問題ないと話しながらやれていた。もちろんシュートを打たれたり、本当に危ないシーンもあったが、ゼロで抑えられる、大丈夫だという雰囲気がチームにはあった」と遠藤は話す。
 
 この落ち着きは、守備面に力を入れてきたこれまでのチーム作りに起因するものだ。大会前には得点力不足などネガティブな面がクローズアップされたが、北朝鮮戦では歯車が上手くはまった印象を受けた。
 
 その点は指揮官も肯定する。
 
「ディフェンスから構築してきたチーム。取れなかったら取らせるなという話はしてきて、派手に勝てるチームでない謙虚さが、泥臭く1点を守り切ることにつながったと思う」

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