J3今治加入内定の“帝京コンビ”横山夢樹&梅木怜。なぜ2人は高卒でプロ入りを決めたのか? 全く異なる決断の経緯【インタビュー】

2023年05月05日 安藤隆人

高卒プロという決断は非常に難しい

来季からの今治への加入内定している帝京の横山(左)と梅木(右)。写真:安藤隆人

 帝京高3年生のDF梅木怜とMF横山夢樹。ともに来季からFC今治入りが内定している2人は、4月24日から5月4日までの11日間にわたって、帝京高を離れて今治での日々を送っていた。

 この間、J3第8節のYS横浜戦(2-4)、9節の八戸戦(1-0)があり、横山はYS横浜戦でベンチ入りを経験。この試合は今治の選手が2人も退場するという荒れた試合になり、彼の出番はやってこなかった。続く八戸戦では、2人ともにベンチ入りを果たせなかったが、プロ選手が全身全霊を尽くすリーグ戦期間に、お互いにチームの一員として過ごせたのは彼らにとって非常に大きな財産となったはずだ。

 筆者は、2人が今治へ向かう直前に帝京高のグラウンドに行き、インタビューを行なった。これから貴重な経験を積みにいく両者が口にした言葉の数々の中で印象的だったのは、2人の今治入りを決める経緯が全く異なる点だった。

 横山と梅木は、今年2月の宮崎キャンプに呼ばれると、そこでハイパフォーマンスを見せてクラブ首脳陣の信頼を掴み、すぐに正式オファーが届いた。この時、すでに今治入りを決めていた横山に対し、当初は大学進学希望だった梅木は悩みに悩んだ。

 結果、梅木も加入を決めたのだが、そこにあったそれぞれの強い意志と考えをこのコラムでは本人たちの証言とともに綴っていきたい。

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 まず、この2人の話に触れる前に、述べておきたいことがある。高卒プロという決断は、今の高校生において非常に難しいものになっている。日本がほかの国などと違うのは、大学生というカテゴリーがあること。それこそ三笘薫、上田綺世、守田英正らのように、高卒プロではなく大学を経由して大きく成長し、日本代表、世界でプレーをするまでに駆け上がっていった選手がいるのが特徴だ。

 10代で見切りをつけられてしまうようなサッカー強豪国と比べると、じっくりと社会性を学びながら成長ができるメリットがある。

 近年の高校生を取材していると、そのメリットを活用する選手は増えてきている。高卒プロではなく、大学でしっかりと経験と社会勉強をしてからプロで勝負をする。この考え方自体は決して間違ってはおらず、非常に的を得ている。だからこそ、逆に高卒プロを決断する重みがこれまでより増しているのも事実だ。

 ましてやそれがJ1ではなく、J2、J3ともなると、その重みはさらに増す。重みとはすなわちリスクとも表現ができる。

 ここで言いたいのは「どれが正解か」という議論ではなく、重要なのはその決断を下した本人の考え方や考えの過程にある。サッカーに限らず、人生の決断を下すのは他人ではなく本人であり、その決断にきちんと責任と自覚を持てるかが、その先で成功するかしないかの差になる。

 今回、横山と梅木は高卒プロ、J3の今治に行く決断を下した。2人の本音を聞くと、そこにきちんとした意思と責任を感じたからこそ、このインタビューコラムをしたためようと決めた。コラムを通じて、2人の思いを感じていただけたら幸いだ。
 

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