【現地記者座談:選手編】金崎、清武、柏木のセンターラインは新たな可能性を提示した。転換期を迎える長友にも注目

2015年11月14日 増山直樹(サッカーダイジェスト)

「ハリルホジッチは自分の現役時代を金崎に重ねているんじゃないかな」(宇都宮)

シンガポール戦で印象的な活躍を見せた金崎は、FW陣の競争を活性化する存在となりそうだ。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト編集部)

 11月12日のシンガポール戦に3-0で勝利を収めた日本代表だが、識者たちの目にはその戦いぶりはどう映ったのだろうか。シンガポール戦を現地取材した宇都宮徹壱氏と河治良幸氏に話を訊いた。
 
【PHOTOギャラリー】シンガポール 0-3 日本
 
――アウェーマッチが2試合続く11月シリーズですが、まずはシンガポールに勝ちました。その試合で特に印象に残った選手は?
 
宇都宮「まず金崎に触れないわけにはいきません。欧州では時折、久しぶりに代表復帰した選手が結果を残したりしますが、日本では最近見られなかった傾向です」
 
河治「確かにその意味では珍しいパターンですが、実力者でも久しく呼ばれてない選手が多いのは前監督のザッケローニがメンバーを固定化した側面もあるでしょう」
 
宇都宮「なるほどね。ただ金崎に関して言えば、まずはそこが印象的です。このタイミングで招集され、先発に抜擢されて、さらにはゴールまで決めた。そのストーリーにかなりのインパクトを感じました」
 
河治「前を向いた仕掛け、前線でのポストプレー、サイドに流れてのクロス、チャンスにシュートを打つ。この4つのプレーをハイレベルにこなした。なかでも前を向いたら仕掛けるという姿勢が最上位にあるのが良いですね」
 
宇都宮「ちょっと妄想なんですが、ハリルホジッチは自分の現役時代を金崎に重ねているんじゃないかな、と。時代は違えど、先ほどの4つのプレーはFWとしてのハリルホジッチに当てはまる。指揮官は『自分はFWだった』と事あるごとに言うように、どこかで自分と似た選手を探していた節がありますし」
 
河治「個人的には、金崎はアルジェリア代表の中心だったスリマニに似ていると思います。やっぱりああいうタイプをハリルホジッチは好むんでしょう」
 
――ほかに気になった選手はいますか?
 
河治「まず挙げるなら、柏木です。決して日本の攻撃の全権を握ったわけじゃないけど、考えながらやっていた。相手の様子やチームの疲労度を含め、展開を読めるゲームメーカーとして存在感を発揮しました、時間と対話できる選手だな、と」
 
宇都宮「良い言葉だね」
 
河治「そのうえで、デュエルもできていた。ハリルホジッチって、どんなにゲームメイクが上手くても球際で戦えない選手は使いたがりませんからね」
 
宇都宮「そう考えると、柏木の起用はハリルホジッチなりの柴崎へのメッセージとも受け取れます。決して柏木をダシに使うわけじゃないけど、『こういうプレーを観ておきなさい』というような」
 
河治「柴崎だけじゃなく、Jリーグにいるゲームメーカー的な選手は希望を持てたかもしれませんね。そんなタイプも今では少なくなりましたが。柏木の活躍で同時に感じたのが、日本にゲームメーカーが減っていることです。今回招集された遠藤、山口も、どちらかというと"長谷部側"の選手。ゲームを作ることって、なかなか稀有な才能ですから。そこを持っている選手が柴崎だし、あるいはポテンシャルで言えば川崎の大島なのかもしれない」

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