【鹿島インタビュー】ナビスコMVPの小笠原満男に訊く理想のボランチ像 「日本が世界の強豪に勝つにはボールを奪えなきゃいけない」

2015年10月31日 増山直樹(サッカーダイジェスト)

「ボランチが“怖がる”と、チームは機能しない」

中盤で攻守に絡まなくてはならないボランチは、「自分がこうしたい」ではなく、「流れを読んで、どこでなにをすべきかを観察する」ことが重要だという。写真:徳原隆元

 残り3試合とクライマックスが迫るJ1第2ステージ。石井監督の就任以降、飛躍的に成績を伸ばす鹿島は、首位の広島と勝点31で並ぶ2位に付けている。復活した常勝軍団が目指すのは、ステージ制覇とその先のチャンピオンシップ。不動の要として中盤で存在感を放つ小笠原満男が、自身のポジション=ボランチの重要性と理想像について、私見を語ってくれた。
 
【写真】日本代表ボランチの系譜~オフトJAPANからハリルJAPANまで

【写真】ナビスコカップ決勝
 
――ボランチとひと言で言っても、そのプレーには様々なイメージがあります。
 
「ボランチは、特に多くの要素が求められるポジションです。攻守両面で働くのはもちろん、全体を見渡してチームのバランスも考えなきゃいけない。時には前線に出て得点に絡んだり、声を掛けて周りを動かす必要もあります」
 
――まさにチームの心臓、頭脳と言えますね。
 
「360度全方向からプレッシャーを受けるし……。本当に頭を使うポジションですね」
 
――なかでも、重きを置いている仕事はありますか?
 
「自分が大事にしているのは、試合の状況を読んで、それに応じて的確にプレーすること。FWであれば点を取る、DFなら対峙した相手を封じ込めて失点をゼロにするといった明確な役割がありますが、ボランチは点を狙いに行くだけ、守るだけじゃダメですから」
 
――具体的に言うと?
 
「パスにしても、無難な横パスだけでなくスイッチを入れる縦パスが必要になる。当然、守備で強く当たるべきシーンもあります。試合の点差や相手の状況まで頭に入れて、効果的なプレーを選択する。『自分がこうしたい』じゃなく、流れを読んで、どこでなにをすべきかを観察するってことですね」
 
――では逆に、ボランチとしてやってはいけないプレーは?
 
「怖がることかな。ミスを恐れてボールを受けないとか、五分五分のボールにビビって飛び込まないとか。そこで怖がってボランチが機能しないと、チームは勝てない」
 
――相手のボランチが機能しないようにするのも、仕事のひとつですね。
 
「そこは相手を見ます。例えば足もとが上手くてパスをさばけるキーマンにはボールを触らせないようにするし、あえてボールを持たせる選手もいる。そこは全員に同じように対応するんじゃなくて、相手の機能性を落とすように仕向けます」
 
――例えば、第2ステージ12節の浦和戦(1-2)では、試合の状況に応じて柴崎選手と横ではなく縦に並ぶなど、相手を牽制しているなと感じました。
 
「実際に柴崎とも話をしましたし、感覚的に動いた部分もあります。あまり戦術的な話はできませんが、ボランチの位置取りは状況に応じて変えていますね。浦和戦では後半に向こうがシステムや配置を変えてきて、ウチも対応する必要があった。そこは周りの選手と話して、相手が嫌がることをやってこっちの良さが出せるように考えています」

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