【日本代表】ストライカー不遇の法則。佐藤寿人、豊田陽平…それでも代表監督に愛されなかった理由

2015年10月16日 加部 究

ザック体制の始動当初は“高さ”を求め、前田、李、ハーフナーが1トップに起用された。

現在の日本代表は前線に強力なターゲットマンを要さない。流れとしては佐藤や大久保らに傾いているが、ハリルホジッチ監督は若手の伸びしろを買った選考を続けている。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 いくらJリーグで実績を残しても、日本代表で陽の目を見ないストライカーは少なくない。広島の佐藤寿人や鳥栖の豊田陽平は、その代表格と言えるだろう。
 
 国内屈指の実力を持ちながらそれでも代表監督に愛されなかったのはなぜか。選手独自の特性や時代ごとの背景を踏まえながら、その理由を探る。
 
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 ブラジル・ワールドカップを終え、新しく日本代表監督に着任したハビエル・アギーレは、FWに皆川佑介、CBにも坂井達弥を抜擢した。まだ所属クラブでもレギュラーを獲得していない選手たちなので、まず条件を満たす人材から絞り込み、将来性も考慮した上で選び出したに違いない。ふたりとも180センチを超えるサイズがあり、坂井はレフティという特徴も備えていた。
 
 かつてオランダ人のハンス・オフト監督がマツダ時代の教え子でもあった高木琢也を招集し、当時は賛否両論が飛び交ったものだが、概して欧州の監督はターゲットマンを求める傾向が強い。多少技術に難があったとしても、ゴール前で高さを活かせて身体も張れる選手を必要だと考える。
 
 だが日本と身体的な特徴が似たメキシコ人の監督が、世界と戦うには高さが要るという発想を持っていたことが面白かった。アギーレ監督がFWに高さを求めるなら、就任時点で最も相応しい実績を残していたのは豊田陽平だった。しかしワールドカップを終えたばかりという節目で監督を引き継いだアギーレは、4年先を睨んで伸びしろを買ったということだろう。
 
 一方でブラジル・ワールドカップまでの4年間を指揮したアルベルト・ザッケローニ監督は、途中から高さという武器を切り捨てた。就任以来最も信頼を置いてきたFWは前田遼一だった。高さもあるが、ボールを収める高い技術も備えた万能型ストライカーである。
 
 確かに2列目に岡崎慎司、本田圭佑、香川真司が並ぶ日本代表で良質なハーモニーを引き出すには、このタイプが理想だった。2011年アジアカップで決勝ゴールを決め、同監督在任中では会心の勝利として特筆される韓国戦の快勝劇(札幌/3-0)に貢献した李忠成も、やはり前田を理想として追いかけてきた。
 
 所属のマインツで1トップに起用され始めた岡崎を、あえてサイドで使い続けた拘りを見ても、日本代表の1トップには高さも要るという判断があったと推察する。実際に2012年に行なわれたフランス戦で、スタメンとしてパリ・サンドニのピッチに立ったのはハーフナー・マイクだった。

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