【セリエA現地レポート】15年ぶりの首位! フィオレンティーナ躍進を演出したP・ソウザ新監督の手腕とは?

2015年09月29日 片野道郎

ファンに「貧乏人のメルカート」と揶揄される。

6節のインテル戦を4-1でモノにし、勝点を15まで伸ばしたフィオレンティーナ。99年2月14日以来、実に5704日ぶりのセリエA首位に浮上した。(C)Alberto LINGRIA

 セリエA6節最大の注目カード、9月27日のインテル対フィオレンティーナ戦は、アウェーのフィオレンティーナが前半23分までに3ゴールを叩き込み、それまで開幕5連勝で首位に立っていたインテルを4-1で粉砕。これで5勝1敗としたヴィオラ(フィオレンティーナの愛称)が、首位に立った。
 
 フィオレンティーナがセリエAの首位に立ったのは、名将ジョバンニ・トラパットーニ監督の下、ガブリエル・バティストゥータ、エジムンド、マヌエル・ルイ・コスタらを擁して、シーズン後半までスクデット争いを演じた99年2月以来、約15年ぶりのこと。2002年の破産・消滅の後、現オーナーのデッラ・ヴァッレ兄弟によって新たに発足した「ACFフィオレンティーナ」にとっては、初めての首位である。
 
 しかし、今から1か月あまり前の開幕時点では、ヴィオラがここまでの躍進を果たすとは、誰ひとり期待も想像もしていなかったに違いない。なにしろ夏のカルチョメルカート(移籍市場)は散々な状況で、クラブ首脳陣はサポーターからの厳しい批判に晒されていたほどだったのだから。
 
 ヴィンチェンツォ・モンテッラ前監督が契約延長をめぐるトラブルで退任したのにはじまり、モハメド・サラーが残留(チェルシーからのレンタル延長)を拒否してローマに、契約書にサインする直前だったセルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチがラツィオにそれぞれ"逃亡"。さらに、右ウイングのレギュラー候補筆頭だったホアキン・サンチェスまでが、開幕目前に古巣ベティスへの復帰を強引に要求して勝ち取るなど、契約延長を拒否してフリーエージェンドでユベントスに移籍したGKネトを含めると、何と5人に"逃げられる"という困難に直面した。
 
 新任のパウロ・ソウザ監督はメジャーリーグでの実績が皆無なうえ、主な新戦力は国際的には無名に近いニコラ・カリニッチ、他クラブからの"お下がり"感が強いマリオ・スアレスやヤクブ・ブワシュチコフスキ、ダビデ・アストーリなどインパクトに欠けた。サポーターへのアピールという点では、明らかに物足りなかった。
 
 実際、メルカート終了後最初のホームゲームだった3節のジェノア戦では、ティフォージ(熱狂的サポーター)が陣取るゴール裏に「貧乏人のメルカート」という首脳陣批判の横断幕が張り出されたほどだ。

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