「小さくてもできる、を示したい」強豪・履正社のゴールを守る“163センチGK”が語る「僕の生きる道」

2022年08月13日 安藤隆人

高校選びで直面した厳しい現実

履正社のゴールマウスを守る頼れる守護神・湯地。写真:安藤隆人

 今年3月に行なわれたJヴィレッジカップ。全国の強豪Jユース、強豪校、そして日本高校選抜U-17とU-17日本代表が一堂に会した豪華かつハイレベルなそのフェスティバルで、準優勝した履正社(大阪)のゴールマウスを守っていたのが、163センチの小さなGK湯地駿介だった。

 日本高校選抜との決勝戦では191センチの小林俊瑛(大津)とゴール前で競り合うなど堂々と渡り合い、ピンチではビッグセーブを連発するなど非常に印象深かった。

 その後、高円宮杯プレミアリーグWEST、インターハイにも出場をした湯地は、8月6日から10日にかけて開催された和倉ユースサッカーフェスティバルにも参加。誰よりも声を出してチームを鼓舞し、鋭いシュートストップや的確なハイボール処理も披露した。

 そんな湯地は、いかにして高校年代のハイレベルな相手と対峙しているのか。また、どのような苦労を重ねてきたのか。その胸の内を訊いた。

「周りからは常に『小さいGK』という目で見られますし、この身長でGKは厳しいというのは僕自身がよく分かっています。昔はそれが嫌だったし、悔しくて仕方がなかったのですが、今はこれまで積み重ねてきた自信があるので、そういう目や声は気にならなくなりました」
 
 湯地がGKを始めたのは小学校4年のとき。小学時代はGKとフィールドプレーヤーを兼用していたが、SC大阪エルマーノに所属した中学時代からGK1本となった。当時から身長は低いほうだったが、「今ほどずば抜けて小さいということはありませんでした。中2から試合に出場していましたし、中3ではレギュラーとして大阪府1部リーグを戦い抜いたので、技術的な自信はありました」と明かした。

 しかし、厳しい現実に直面したのは高校選びのときだった。周りのチームメイトには強豪校から声がかかるなか、自分にはどこからもかからなかった。焦った湯地は自ら大阪の強豪校に売り込みをかけた。まず4つの高校に練習参加を志願したが、そこで待っていたのは、身長が低いことによるあまりにも厳しい立ち位置だった。

 練習すら受け入れてもらえなかった高校もあれば、参加こそしたが「僕より身長がでかいという理由だけで、優遇されている現実を目の当たりにしました」と振り返る。なかでも一番悔しい出来事があった。とある高校で湯地を含めて3人のGKが練習参加をした際、180センチ近くあった2人はトップチームのコーチ陣が丁寧に練習を見て指導をしてくれたが、湯地だけは下のカテゴリーのチームで、まともなGK練習をさせてもらえなかったという。

「もうGKとして誰も認めてくれないのかと思いました」と絶望する一方で、「僕が諦めてしまったら、それこそ身長だけで判断をした人たちの思うツボだし、僕のように身長がなくてもGKをやっている子供たちに『小さくてもできる』ということを示せなくなる。それが嫌で、僕が絶対に活躍して示したいと思ったので諦める気は一切なかった」と不合格を告げられ続けるなかで、決して強豪校への進学を諦めなかった。
 

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