争奪戦の末にFC東京入りが内定。早大3年生MFが高校時代にJ1強豪のアプローチを断るも…大学屈指のタレントに成長するまで

2021年10月23日 安藤隆人

早稲田大3年生の西堂久俊が市立船橋時代にJ1クラブからのアプローチを断ったワケは?

2023年のFC東京加入が内定した西堂。市立船橋から早稲田大に進学し、大学屈指のサイドアタッカーに成長した。写真:安藤隆人

 オンリーワンになれる選手ではないか。

 早稲田大の3年生MF西堂久俊を観ていると、そんな期待感が湧いてくる。両足のボールタッチは非常にスムーズで一瞬のスピード、正確なボールコントロールを駆使して局面を打開する力を持ち、そして左利きという希少性も持つ。右サイドからカットインからのシュートだけではなく、右足で持ち出して縦に仕掛けて正確なクロスを上げることもできるし、左に回ればさらに鋭い縦突破とカットインから左右の足でラストパスを供給することが出来る。
 
 これだけ特異性を持ったサイドアタッカーはなかなかいない。そう思うのは筆者だけでないことは、彼がこれまで多くのJクラブのスカウトを魅了してきたことでも実証される。

 10月1日に早くも2023年からのFC東京加入内定が発表された彼は、市立船橋高時代にすでにJ1の強豪クラブから熱烈なラブコールを受けていた。

「その時は3日間練習参加をして、自分のプレーを割と出せたのですが、高卒プロが僕の中ではリスクに感じたんです。凄く評価していただいて『練習に参加をしてほしい』と言われた時は喜びよりも不安が大きくなったことが正直なところで、これは人生の大きな賭けだなと思ったんです」

 普通の高校生ならば喜んで飛びつくであろう話だったが、彼はそこで本気になって自分の将来について深く考えた。この不安を抱えたままプロの道に進んでもいいのか。ちょうどその頃、彼は早稲田大の練習にも参加し、大学サッカーのレベルの高さも肌で感じていた。

「高卒プロに飛び込んで、もしダメだった時にその後の人生に響いてくる危険性もあるのではないかと考えました。当然、高卒プロに進んだ方がA代表になれる確率や海外などステップアップする可能性は大きくなります。ですが、そのような選手は大きな賭けに勝った選手。正直、僕はそこまでのリスクを負えなかったし、今思うと自信がなかったのだと思います」

 J1クラブからのアプローチを断り、彼は早稲田大進学を決断した。
「もうこんなチャンス(J1の強豪クラブから声がかかること)はないかもしれない。もしかするとこの決断を後悔してしまう時が来るかもしれない」
 

次ページ「周りからは『なんで断って大学にきたの?』と不思議がられましたが…」

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事