【岩本輝雄の目】宇佐美貴史「ハットトリック解析」――スペックが高すぎる点取り屋

2015年06月30日 岩本輝雄

J1通算得点ランク2位の佐藤寿人に勝るとも劣らない技術。

2トップでコンビを組むパトリックと縦関係となった宇佐美(39)は、「そこまで下がるか」という位置取りから組み立てでも貢献した。(C)J.LEAGUE PHOTOS

 現役選手で今、最も多くのゴールを決めているのは、広島の佐藤寿人だ。J1の通算得点ランキングを見ると、1位は157得点の中山雅史さん。そして2位が152得点の寿人。おそらく、今季中にもこの順位は入れ替わるのではないだろうか。
 
 寿人とは仙台時代で一緒にプレーした仲で、彼の優れたシュート技術はその頃から際立つものがあった。シュート練習でもバンバン決める。その技術は今もまったく衰えていないし、むしろ向上しているとも思う。ハマった時は日本で一番、シュートが上手い選手と言っても過言ではない。
 
 そんな寿人に勝るとも劣らない選手が、G大阪の宇佐美貴史ではないだろうか。
 
 第1ステージ最終節のアウェー山形戦、彼はわずか13分間で、J1では自身初となるハットトリックを達成した。
 
 試合は序盤から山形ペースだった。ハイプレッシャーで相手の先手を取り、ゲームを優位に進めていく。チャンスを決め切れず、ゴールは奪えなかったけど、少なくとも前半の山形のサッカーは評価に値するものだった。
 
 劣勢を強いられたG大阪だったけど、彼らは慌てていなかった。確かに主導権は握れなかったけど、ある意味、"やらせている"という風に見えた。相手の勢いが勝るのであれば無理をしない。リスク管理を徹底して、風向きが変わるのを待つ――昨年度王者の風格と余裕が十二分に感じられた。
 
 後半に入ると、さすがに山形にも疲れが見え始める。G大阪も攻撃の強度を少しずつ上げていくなかで、G大阪の背番号39は山形にとって嫌な存在だったに違いない。
 
 G大阪の布陣は4-4-2だけど、2トップのパトリックと宇佐美はどちらかというと縦関係になり、4-4-1-1とも言える変則的な形だった。最前線にパトリックがいて、ひとつ後ろの位置に宇佐美がポジションを取る。
 
 宇佐美が賢いのは、バイタルエリアの込み入ったスペースではなく、相手の2ボランチの脇あたりでボールを受けていたこと。「そこまで下がるか」というぐらいまで下がってきて、そこでパスをもらって前を向き、推進力のあるドリブルで敵陣を崩しにかかっていた。

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