【スペシャル対談~後編】嵜本晋輔が南葛SCの株式を取得した狙い。 Jリーガー兼ビジネスマン・都倉賢も感嘆する“別次元の思考”とは?

2021年09月10日 吉田治良

アスリートに限らず全社員がデュアルキャリア

8月、パートナー契約を結んでいた南葛SCの株式を取得(出資比率33・5%)したバリュエンス。『キャプテン翼』というIP(知的財産)を活用したビジネスモデルを想定している。(C) Valuence Holdings Inc.

 バリュエンスホールディングス(以下バリュエンス)を率いる嵜本晋輔・代表取締役社長と、V・ファーレン長崎で活躍する現役Jリーガー、都倉賢選手のスペシャル対談。
後編の大きなテーマとなったのが、「経営哲学」。これからの企業は、いかなる理念を掲げ、どのような働き方を社員に提示し、そのポテンシャルを開花させていくべきなのか。
嵜本社長のメッセージは、昨年からワイン事業をスタートした都倉選手はもちろん、これから何か新しいビジネスを始めようとしている現役アスリートにとっても、大いに参考になるはずだ。

 さらに、先頃バリュエンスが、関東サッカーリーグ2部に所属する南葛SCの株式取得に踏み切った経緯と、その狙いについても聞いていく。

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──バリュエンスが進めるアスリートためのデュアルキャリア採用ですが、実際に採用された方の中には、関東サッカーリーグ2部の南葛SCでボランチとしてプレーする布施周士さんがいらっしゃるそうですね。

嵜本晋輔(以下、嵜本):はい。南葛SCの岩本義弘GMがフェイスブックで、「我々の選手を雇用してくれる企業を募集します」という投稿をしていたのを目にして、僕のほうから連絡したんです。我々も積極的に店舗展開をしていて人材が必要でしたし、それにデュアルキャリアという考え方を、もっと世の中に浸透させたいという思いもありました。南葛SCでレギュラーとして活躍している布施くんは、平日は朝の10時から夕方5時まで仕事をして、それから練習、土日は完全休みで試合に臨んでいますが、そういった新しい働き方の提案は、これからの企業のテーマだと思っています。

都倉賢(以下、都倉):企業での働き方は、これからどんどん変わっていきそうですか?

嵜本:そうですね。弊社では、アスリートに限らず、全社員がデュアルキャリアで複業(副業)をしていいことにしたんです。週休3日にして構わないので、自分のやりたいことがある人はどんどん申請してくださいと。

都倉:それはすごい!

嵜本:これまでの終身雇用、年功序列といった働き方は、完全にオールドタイプ。アスリートが当たり前のように社員として活躍するとか、一般社員が2社を掛け持ちするとか、そういった柔軟な働き方を制度として打ち出していく企業に、より優秀な人材が集まってきます。ただ実際、そうやってスキルを切り売りして副業ができるのは、2:6:2の法則で言うと、上位の2割の層くらい。企業はその2割の争奪戦になるので、まずは我々が、彼らにとって必要不可欠な、価値のある会社にならなくてはいけない。
もちろん、あとの8割がどうでもいいわけではありません。その大半は、自分の可能性にフタをして、世の中から求められる偽りの自分を演じてしまっている。そういった人たちを、社員任せではなく、企業側が支援体制を作って、しっかりと成長させていかなくてはならないんです。彼らも本来は、とてつもないポテンシャルを秘めている。それを開花させてあげることが、バリュエンスの使命なんです。

都倉:僕は今、ようやくワイナリーを始めたばかりで、PL(損益計算書)やBS(賃借対照表)とにらめっこするだけでハーハー言っているのに(笑)、嵜本さんはそんなことまで考えているんですね。抱えている社員の数だけ人生があって、その家族も含めて支えるというのは、純粋にすごい。ワインが売れれば嬉しいし、売れなければ辛いだけの僕とは別次元の考え方で、とても参考になります。
 

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