【CL決勝】勝負のポイントはどこに? 現役イタリア人監督が戦術面から詳細分析

2015年06月07日 ロベルト・ロッシ

主審にPKの笛を吹く勇気があれば、まったく別の展開に。

バルサとユーベの明暗を分けたポイントは、どこにあったのか。かつてザッケローニにも師事した現役イタリア人監督が炙り出す。 (C) Getty Images

 開始5分足らずで先制するという、バルセロナにとっては願ってもない展開。流れによっては、前半のうちにもう1点を加えて試合を決定づけてしまう可能性もあった。
 
 しかしユベントスもよく持ちこたえて態勢を立て直し、後半には数少ないチャンスを活かして同点に追いつく。そしてそこからさらに勢いに乗って攻勢に出て、バルサを困難に陥れた。
 
 この試合の勝負の綾は、まさにその時間帯にあった。同点に追いつかれた後、さらに攻め立てられたことで、バルサは明らかに浮き足立っていた。
 
 67分、ビダルのクロスをD・アルベスと競り合ったポグバが倒された場面は明らかにPKだったが(完全に肩に手をかけて後ろに引き倒している)、主審には笛を吹く勇気がなかった。
 
 そしてその後一旦プレーが切れた直後、ユーベのスローインからイーブンボールがラキティッチの足下に流れ、そのパスを受けたメッシがドリブルで50メートルを独走、そのままシュートを放ってスアレスのゴール(ブッフォンが弾いたところをタップイン)を呼び込んだ。
 
 バルサのアタッカー陣にカウンターのチャンスを与えないことが死活問題だというのは、プレビューでも指摘した通り。残念ながらその不安が現実となってしまった。
 
 相手がバルサとはいえ、ユーベも基本的なメンタリティは自ら主導権を握って戦うビッグクラブのそれだ。同点に追いついて心理的優位に立ち、相手を押し込める状況になった時、それにブレーキをかけるというのは彼らにとって自然なことではない。
 
 そこで生まれた小さな隙、そしてイーブンなこぼれ球を収められなかったという小さな不運が、あまりにも高くつくことになってしまった。
 
 しかし総合的に見れば、ユーベはよく戦ったと思う。失点の場面を除けば、守備の局面はまずまずよく機能していたし、最終ラインはほとんどミスを犯していない。
 
 前半は守勢に回り過ぎたとはいえ、開始早々に失点したショックを考えれば、0-1でハーフタイムを迎えたこと自体が上出来だった。
 
 そして後半最初の10分間、同点ゴールを奪うまでは、ほぼ狙い通りのアプローチで流れを手元に引き寄せていた。「たられば」になることを承知で言えば、もし主審にPKの笛を吹く勇気があれば、試合はまったく別の展開になっていたのだ。

【ゲームPHOTOギャラリー】バルサ3-1ユーベ

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