韓国のエースにしてやられた…冨安健洋が忘れられない7年前の衝撃。成長を促した敗北と出会い【五輪代表エピソード】

2021年07月08日 安藤隆人

2014年のU-16アジア選手権で世界大会を懸けて韓国と対戦。エースのイ・スンウと対峙し…

U-16日本代表当時の冨安。アジア選手権では、韓国の前に涙をのんだ。写真:安藤隆人

 堂安律が刺激を受けたように、冨安健洋もまた2014年にタイの地で大きな衝撃を受けた。

 U-16アジア選手権2014において、98ジャパンの守備の要だった冨安はU-17ワールドカップ出場権がかかった準々決勝の韓国戦にCBとしてスタメン出場。42分にカウンターを受けると、中央で韓国のエースであるイ・スンウにボールを収められてドリブルを仕掛けられた。この時点で冨安は後手に回り、中途半端に食いついてしまったことで、裏が空いてしまった。そのスペースに走り込んだ選手に展開をされると、今度はその選手に反応してしまい、ゴール前に飛び込んできたイ・スンウを完全フリーにしてしまった。結果、折り返しをゴールに蹴り込まれてしまった。この間、彼は完全にボールウォッチャーになってしまっていた。

 極め付けは47分。後半立ち上がりという集中しなければいけない場面で、ハーフウェイライン手前でイ・スンウにターンで前を向かれると、そこからスピードに乗ったドリブルを繰り出され、手が付けられない状態に陥ってしまった。
 
 ぐんぐん加速してくるイ・スンウに対し、冨安はズルズルとラインを下げながら、ドリブルコースを切ろうとした。彼の横にはCB下口稚葉(現・ファジアーノ岡山)が、イ・スンウの背後からは堂安が追いかけてきているという、いわば数的優位の状態だったが、「どっちがアプローチに行くのかが曖昧になってしまい、一瞬迷ってしまった」と口にしたように、ボールホルダーに対して誰もボールにプレスに行けない『お見合い状態』に。彼と下口の間を打ち抜かれると、飛び出してきたGKも交わされ、無人のゴールに試合を決定づける2点目を決められてしまった。

 約50メートルの単独突破による失点。映像で振り返れば、いくつかイ・スンウを止めるチャンスはあった。だが、悉くそれを逃し、最悪の結果がもたらされた。

「一瞬の隙を突かれるということがどういうことか分かりました。判断、パワー、スピードなどまだまだ足りないものが多いと感じたので、これから今日の経験を常に思い出しながら、日頃の練習に全力で取り組んでいかないといけないと感じました」

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次ページ高3で福岡のレギュラーポジションを獲得。当時の井原監督の言葉に大きな影響を受ける

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