三笘薫、田中碧が抜けてもチーム力は落ちない!?――アナリスト的視点で見た川崎の強さとは

2021年06月23日 サッカーダイジェストWeb編集部

分析官時代の印象はどんどんスルーパスを狙ってくるチーム

今季いまだ無敗を誇る川崎。22日に開幕したACLでも強さを見せつけるか。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 昨シーズンに続き、J1リーグで独走状態の川崎フロンターレ。6月22日からは初のアジア王座を掴むべく、アジア・チャンピオンズリーグの舞台に挑む。

 ここでは、Jリーグの各クラブでスカウティング担当を歴任し、2019年には横浜F・マリノスで自チームや対戦相手を分析するアナリストとしてリーグ優勝にも貢献した杉崎健氏に、川崎の強さの秘密について分析していただいた。いまだ今季無敗を誇る姿は杉崎氏の目にどう映るのか。ここ数シーズンの変化や今後の展望についても解説する。

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 私はJリーグで3クラブをアナリスト(分析官)として渡り歩いてきましたが、川崎フロンターレに対して持っていた印象は一般のJリーグファンの方々と同じように、「止める蹴る」という言葉に象徴されるボールを扱う技術の高さをベースとした攻撃力にあると感じています。それに加えてチームとしてのまとまりがある。そこが彼らの良さです。

 川崎を分析する際には、私がアナリストをしていた当時は4-4-2をベースにしていましたが、4-4-2だからこういう攻略が望ましいという発想ではなく、システムの中に選手個々の能力がどうハマっているのか、そのうえでストロングとウィークを映像で確認したり、推測したりする。例えば、川崎の左サイドを担う車屋選手や登里選手の裏をどうやって取るのか。彼らは裏が弱いのか、自分の前が弱いのか。そうしたことを全ポジションに渡って細かくチェックしていました。
 
 時間をかけてやりたいところですが、基本は1週間に1試合あり、水曜にルヴァン杯や天皇杯が入ってくると中3日でシーズンが回っていくので、どうしても時間が限られてきます。なんとかして効率的に選手だけのプレー集を検索して見たり、専用の外部会社のソフトに頼ったり。そうして、映像をチェックして彼らのストロング・ウィークをまとめる作業をどのクラブでもやっていました。

 では当時、川崎のどんなところに脅威を感じていたのか。彼らの特長と言えば攻撃ですが、とりわけ最も怖かったのはどこからでもスルーパスを狙ってくるということ。ゴールに直結するパスが中村憲剛選手や大島僚太選手、現在で言えば田中碧選手や脇坂泰斗選手ら2列目、3列目から、どんどん出てくるわけです。手前で繋ぐだけでなく、いつでも裏を狙うよという感じで攻めてくる。それが一番の強みで、アタッキングサードだけでなく、隙があればハーフウェーラインくらいからスパーンと通されてしまう。ひとりだけならまだ対処の仕方もあると思いますが、中盤の選手ほぼ全員がそれをできる。的を絞りようがなかったですね。

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