英国人記者が見た、スコットランドの予想外の敗北。ファンの“激情”は因縁のイングランド戦で最高潮に【現地発】

2021年06月18日 スティーブ・マッケンジー

23年ぶりのビッグトーナメント出場

シックの2発に沈んだスコットランド。主将のロバートソン(手前)も肩を落とした。(C)Getty Images

 6月11日に開幕したEURO2020で、13日には23年ぶりにビッグトーナメントに復帰したスコットランドが、ハムデン・パークでチェコと対戦した。

 彼らが最後に出場したビッグコンペティションは、1998年にフランスで開催されたワールドカップだ(日本がW杯初出場を叶えた大会)。初戦の相手はサッカー大国のブラジル。当たり前のようにスコットランドは敗北(1-2)したが、選手たちはタータンチェックのキルトを着用して入場し、対峙したセレソンは「信じられない」という表情を浮かべていた。

 今回のEUROで、スコットランドはホームであるハムデン・パークで2試合を行なう。1万2000人のファンがスタジアムに集うことは、大きなアドバンテージになる。

 久しぶりの国際舞台ということで、チームの雰囲気も良かった。リバプールでプレーする主将のアンドリュー・ロバートソンは、チーム関係者全員に「Irn Bru(スコットランドの有名なソフトドリンク)」、ショートブレッド、「Tennent’s Lagar(スコットランドのビール)」の詰め合わせをプレゼント。さらに、アーセナルのキーラン・ティアニーはこのセットに、1個300ポンド(約3万9000円)の、バング&オルフセンのヘッドフォンを加えたという。

 選手やスタッフは大喜びし、代表チームは結束力を高めていた。ちなみに、ジョニーウォーカーのブルーラベルのボトルも入っていたと報じられているが、選手たちは祝杯のためにとっておくことで一致したようだ。
 
 戦力としても十分に揃っていた。ロバートソン、ティアニーに加えて、ジョン・マギン(アストン・ビラ)、スコット・マクトミネイ(マンチェスター・ユナイテッド)など、プレミアリーグで活躍している選手も多い。少なくとも、初戦では勝利を手にするだろうと楽観的な雰囲気も漂っていた。

 だが、試合には0-2で敗れた。パトリック・シックの素晴らしいゴールを目の当たりにしたファンは頭を抱え、天を仰いだ。ため息があふれ、一部のファンは暴動とまではいかなくとも、街中で大声で叫ぶ姿などが、ニュースで何度も報じられた。

 この試合のチケットを取れなかった何千人、何万人ものファンは、ビアガーデンやパブで試合を観戦し、グラスゴーのパブリックビューイングにも約6000人が殺到した。たった1万2000人しか入場できなかったハムデンで、国歌である『Flower Of Scotland』が耳をつんざくような大合唱であったことからも、ファンがどれだけの熱意で試合に臨んでいたのかは、想像に難くない。
 

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