キルギス戦でテストされた“トップ下・原口”は有効なオプションになるか

2021年06月16日 河治良幸

「真ん中でのプレーはすごく気に入っていて、すごく面白い」

キルギス戦はトップ下で起用された原口。溌剌としたプレーは鳴りを潜め、大人しかった印象だが、今回のプレーをポジティブに見ることもできる。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 3週間に及ぶA代表の活動の締めくくり、そして2次予選のラストとなるキルギス戦はおもに国内組が大いにアピールする形で5-1の勝利を飾った。

 オナイウ阿道のハットトリックで3点をリードした後、キルギスの攻勢に守備がバタバタする形から守田英正のファウルでPKを献上。タジキスタン戦に続く失点を喫するなど、チームとしての反省材料が無かったわけではない。

 しかしながら、これまであまり出番の無かったフレッシュなメンバーが、2次予選で最も強い相手と森保一監督も警戒していたキルギスを相手に、積極的なサッカーで5バックのキルギスに5得点できたことは、最終予選に向けても良い意味で競争が活性化することを予感させる。

 そのなかで、4-2-3-1のトップ下で起用された原口元気に関しては、評価が分かれる部分もあるだろう。山根視来のクロスにオナイウが合わせようとして、相手のハンドを誘った1点目につながるシーンは原口が起点となっていたし、小川諒也のクロスにオナイウが合わせた3点目も、原口からの展開で小川が前を向くことができた。

 ただし、61分に古橋亨梧との交代で退くまで、直接ボックス内でフィニッシュに関わるプレーや、得意のドリブルでディフェンスを破るような溌剌としたプレーが鳴りを潜めていたのは確かだ。特に交代で入った古橋が推進力を前面に押し出して浅野拓磨とともに相手ディフェンスの脅威になっただけに、大人しい印象になったのも確かだ。

 しかしながら今回のプレーをポジティブに見ることもできる。ハノーファーではトップ下あるいはインサイドハーフとして、これまでのサイドアタッカーとは異なるプレーを見せて新境地を開拓していた原口は、キルギス戦を前に「真ん中でのプレーはすごく気に入っていて、すごく面白い」と語っていた。
 
「トップ下ではいろんな仕事ができるので、サッカー選手としての深みは出てきていると思っているんですけど、代表ではサイドなので。フィジカル的にも戦術的にも多くのことが違うので。どっちも高い水準でプレーできないといけないと思っている」

 そう語る原口はハノーファーでのプレーについて「以前のプレーとはすごく異なっていて、無闇にスプリントするとかではなく、常に良いポジションを取りながらチームがどう上手く回るかを考えてプレーできていた」と振り返る。おそらく新天地となるウニオン・ベルリンでもインサイドから遠藤渓太のようなサイドアタッカーを生かす役割が求められるだろう。

 そうしたクラブの環境で得たものを発揮できるチャンスがキルギス戦だった。原口も「おそらくボールを持てるシーンが多いので、リスクをかけられるところではチャレンジして、そのなかで1本2本成功させたい」と語っていたが、実際は原口本人がそうしたシャカリキさを押し出すよりは、オナイウや坂元達裕、山根など周りの選手たちが持ち味を発揮するためのお膳立てがメインになった。
 

次ページチームとして戦えたのは原口の目立たない働きがあったから

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