「わだかまりは消えていない」デシャンがベンゼマを電撃復帰させた“真の理由”と招集によるリスク【現地発】

2021年06月15日 エル・パイス紙

暇さえあれば、ハンバーガーを食べ、ソファーに寝転がっていた

ベンゼマ(左)の招集は、デシャン(右)監督にとって吉と出るか凶と出るか。(C)Getty Images

 カリム・ベンゼマがフランス代表に復帰した。ウェールズとの強化試合(3-0)で改めて明らかになったのが、9番タイプのストライカーではない彼の融合が決して簡単な作業でないこと。成功すれば大きな効果が期待できる一方で、リスキーな面も看過できない

 チームを率いるディディエ・デシャン監督は、「メンバーの1人に過ぎない」と繰り返し口にするベンゼマについて、フランス代表のスタッフの目には、怠け癖のある選手として映っていた。

 実際、かつての彼は暇さえあれば、ハンバーガーを食べ、ソファーに寝転がっていた。それが同じアルジェリアにルーツを持つジネディーヌ・ジダンのレアル・マドリー監督就任を境に改心し、自宅にトレーニングルームを設け、食生活を改善し、練習にも目の色を変えて取り組むようになった。もっともデシャン監督の下で、同じくモチベーションを高く持ってるとは限らない。

 デシャンは今回復帰を決断するにあたり、ベンゼマと話し合いの場を持っているが、その内容について一切明かしていない。そんな中、内情を知るフランス・サッカー連盟(FFF)の外部テクニカルアドバイザーによると、ベンゼマはデシャンに対して反省の弁を口にすると同時に、挑発的な態度も見せたという。
 
 焦点となったのは、言うまでもなくフランス代表の同僚(マテュー・ヴァルビュエナ)に対する恐喝事件に関与した疑惑だ。ベンゼマは一連の騒動において有罪が確定していない(本人は疑惑を否定)中で、さらし者にされたことに関して不満を訴えた。つまり表向きには円満決着を強調しているものの、根っこの部分では両者ともわだかまりを抱えたままなのだ。

 ではデシャンはなぜベンゼマの復帰に踏み切ったのか。フランス代表はベンゼマ抜きでも前回のEUROで準優勝を果たし、3年前のワールドカップを制覇している。しかも当時に比べて現代表は戦力の底上げがさらに進み、チームとしての成熟度も増している。前出の外部スタッフが指摘するのはジダンの存在だ。
 

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