【短期連載】『AKB48の経済学』著者に訊く“Jリーグと日本経済”第3回「JリーグとAKB48の類似性」

2015年05月23日 石田英恒

80年代後半のバブル経済を背景にJリーグは誕生。

バブル時代後期、レジャー産業の活性化のなかで、プロサッカーリーグ発足の機運が高まり、Jリーグは誕生した。(C)SOCCER DIGEST

『AKB48の経済学』著者がJリーグを多角的に考察する短期集中連載。
 
 最終回は、JリーグとAKB48の類似性について考察する。
 
 現在、Jリーグはアイドルグループ、AKB48と似たような状況に置かれているという。というのは、JリーグもAKB48も、デフレ経済に強いビジネスモデルを追求してきた面があるからだ。
 
 しかし、これからの"ポストデフレ時代"には、そのビジネスモデルが足かせになる可能性がある。Jリーグが復活し、さらに発展するためにはなにが必要なのか――。
 
 日本経済思想史と日本経済論を専門とし、リフレ派論客として活躍するだけでなく、AKB48などポップ&サブカルチャーにも詳しい経済学者の田中秀臣氏に話を聞いた。
 
――◆――◆――
 
――前回は、夏以降の景気回復の可能性は高く、その後のJリーグの発展には「Jリーグの構造的な問題を考えるべき」という発言がありましたが?
 
「その問題点を説明するためには、Jリーグ発足前からの日本の歴史を見ていく必要があります。
 
 93年に発足したJリーグは、実は80年代後半から続いたバブル経済を背景に誕生したものでした。
 
 80年代当時、重要な政策課題のひとつとして挙がっていたのが、余暇の充実とレジャー産業の育成です。働き過ぎの日本人の余暇を充実させなければならない。そのためには、もっと余暇を活用する必要があり、レジャー産業の活性化、高度化が求められていました。そしてレジャー産業の活性化のなかで、スポーツ振興を考えていこうとしていたのです。
 
 バブル時代の最後に、レジャー産業の活性化で地方を発展させていこうと、地方に大型のスキー場やリゾート施設が次々と建設されたのもその一環です。その延長で、地方を拠点としたプロスポーツを作ろうという発想が生まれ、プロサッカーリーグを発足するプロジェクトに注目が集まったのです」
 
――ところが、バブルが崩壊してしまった……。
 
「バブル崩壊と同時期にJリーグは発足しました。それでも、90年代前半はバブル経済の余韻もあり、Jリーグの運営はかなり上手くいったと思います。
 
 というのは、デフレ経済がまだ深刻化していなかったからです。デフレ経済が深刻化するのは1997年以降のことで、それ以前はそれほど深刻ではなかったのです。
 
 スポーツを通して地方の活性化を促すというスキームは、デフレ経済の中で崩壊しました。20年に及ぶデフレ不況がボディーブローのように効き、スキー場経営もリゾートマンション経営もすべて崩壊していったのです。そして、Jリーグもその影響を大きく受けました」

次ページコア層に支えらえているのはJリーグもAKBも同じ。

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