【連載】識者同士のプレミア放談「降格寸前…ニューカッスルの惨状はJリーグの反面教師にも」

2015年05月22日 田邊雅之

「漫画のようなドタバタ劇がニューカッスルで進行中」

最終節に生き残りを懸けるニューカッスル。今回は惨状を呈する「北の雄」を俎上に載せる。 (C) Getty Images

田邊雅之:いよいよプレミアも最終節になりました。上位陣の順位はほぼ決まりましたが、もうひとつの争いはクライマックスですね。
 
山中忍:ハルとニューカッスルによるサバイバル・レース。QPR(20位)とバーンリー(19位)はすでに脱落で、降格圏(18位以下)の残る1枠に入るのを避けようと必死になっています。
 
田邊:ちょっと前まではサンダーランドも絡んでいたんだけど、アーセナル戦に引き分けて残留が決定した。浦和レッズにいたゼリコ・ペトロヴィッチ(現サンダーランド1軍コーチ)も一安心でしょう(笑)。
 
山中:監督のディック・アドフォカートが、嬉し涙なんか浮かべたりして。それにしても、ニューカッスルがここまで苦しむとは思っていなかった。本来なら、こんなポジションにいるチームじゃないですから。
 
田邊:2000年代の初め頃はプレミアでも上位に食い込んで、CLに出場していたわけでしょう? しかも今回降格したりすると、08-09シーズン以来、7年間で二度目となる。ボビー・ロブソンがいたころの輝きはまるでない。
 
山中:没落の仕方が極端ですよね。実は先週、某ウェブサイトのコラムで、いまのプレミアでQPRに負けるようなチームがあるとすればニューカッスルだけだろうと書いたんですが、その通りになってしまった(苦笑)。
 
田邊:サッカー自体が酷いし、雰囲気を見ても、この1か月くらいはチームの体を成していないですね。
 
山中:本当なら放っておいても選手が必死になってもおかしくないのに、まったくそんなムードが感じられない。CBでキャプテンのコロッチーニからして、心ここにあらずというか。プレーに気持ちが入っていないのがありありと分かる。
 
田邊:『テレグラフ』が報じたように、MFのアニタもこの期に及んで、ロングボールは嫌だとか発言したりしている。
 
山中:現実が分かっていないですよね。ただ残留が懸かっているのにチームがチームになりきっていないのは、やはりシーズン中にパーデューの後を継いで助監督から昇格した、ジョン・カーバーの責任がかなり大きいと思う。
 
田邊:同感です。年が明けてからは、たしか2勝ぐらいしかしてない(2勝4分け12敗)。08-09シーズンの終盤、アラン・シアラーが代行監督になったにもかかわらず、そのまま降格してしまった時よりもさらに酷い。
 
山中:冗談まじりだとはいえ、シアラーはQPR戦の後、「カーバーには感謝しなきゃならない。(成績が悪すぎるせいで)自分をボブ・ペイズリーのような名将に見せてくれている」とか呟いていますからね。(著者注:ペイズリーは70年代から80年代にかけて、リバプールの黄金時代を築いた名将)
 
田邊:なのにカーバー本人は、「自分はイングランドで一番優秀な監督だと、いまでも思っている」とか発言したり、この状況の中でゴルフのチャリティーマッチに出たりして顰蹙を買っている。
 
山中:タブロイドにとって、ただでさえいじりがいのある標的なのに、さらに火に油を注いでいますよね。
 
 例えばQPRに負けた後の一件も典型で。カーバーは残留争いに集中するために、選手にインターネットやツィッターを一切使わせないと宣言したのに、翌日にシッソコがいきなりツィッターで呟き始めてしまった。
 
『サン』は、カーバーの「カー」とニューカッスルの愛称「トゥーン」をとって「カートゥーン・ネットワーク」という見出しで早速報じました。同名の子供向けチャンネル並みに幼稚だと(笑)。
 
田邊:サブタイトルは「漫画のようなドタバタ劇が、さらにニューカッスルで進行中」(笑)。可哀想なのはサポーターですよね。

次ページパーデューからカーバーへの監督交代が迷走の直接的な原因。

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