「もちろん苦しんだが…」仏代表復帰のベンゼマが“追放中”の心境を語る! “黄金のトライアングル”に高まる期待【現地発】

2021年06月02日 結城麻里

記者会見では「ママ!愛してるよ!」と叫ぶ一幕も

フランス代表で再び共闘することになったデシャン監督(右)とベンゼマ(左)。 (C)Getty Images

 ついにフランス代表に復帰したカリム・ベンゼマが上機嫌だ。

 5月30日には5年半ぶりにフランス人記者団の前にも登場し、鋭く放たれる質問の矢に25分間も立ち向かった。

 この中でベンゼマは、「もちろん5年以上俺は苦しんだ。でも常に自問自答して、復帰できるように以前より努力したんだ。過去に起きたことは過去のこと。やり直すことはできない。でもいまは最大限のものをもたらしたいし、忘れたい。メンタル面でもフィジカル面でも準備できている」と心境をまとめた。

 また「フランスやフランス人を恨むなんてできないよ。自分自身を責めるのみさ。ただ復帰するにはどうすべきかとかなり自問した。いまは自分の努力が報いられていると思う」と語り、リラックスした笑顔をみせた。

 監督との対談についてはディディエ・デシャン監督がリスト発表した際の説明とほぼ変わらなかったが、最後に「監督にありがとうと言えるか」と突っ込まれると、「あなたたちの前で言ってほしいということかい?…メルシ、ディディエ!」と言い放って、会場を沸かせた。
 
 ノリにのったせいか、会見が無事終了して安堵したせいか、ベンゼマは母に向けても「ジュ・テーム!(愛してるよ)」と呼びかけた。この日は母の日だったからだが、これでまたルンルンムードが伝わってきた。

 EURO2020の優勝候補だが「死のグループ」に入ってもいるフランス代表は、数日前から本拠地クレールフォンテーヌで最終合宿に突入。ベンゼマ復帰を発表してヨーロッパ中を震え上がらせたデシャン監督は、合宿初日から「ノー・イベント」の立場を貫き、ベンゼマ復帰はもう事件でも何でもなくなったとの姿勢をみせている。

 これは注目のストライカーを静かな環境に置いて保護する目的とみられ、配慮もそこここにみえた。

 たとえば初トレーニングでは、レアル・マドリーのチームメイトであるラファエル・ヴァランヌと同色のギブスで出現。次いでミニゲームになると、ギブスの色を変えてアントワーヌ・グリエーズマンのチームに入れ、グリジ(グリエーズマンの愛称)とのワンツーにトライさせた。ベンゼマが少しでもしくじると、すかさずデシャン監督が「何でもない何でもない」と励ました。

 またヴァランヌも「彼がチームバランスを覆すとは思わない。僕らみんな少し興奮しているよ」と気遣いをみせ、同じリヨン出身のコランタン・トリソは、「やっとカリムとプレーできるなんてすごい誇りだよ。だってガキのころの夢だったんだから」と持ち上げた。
 

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