【連載】識者同士のプレミア放談「ジェラードが遺したもの――」

2015年05月15日 田邊雅之

口さがない英メディアもレジェンドに気を遣う。

ホーム最終戦を前にした5月14日の記者会見では、メディアから記念のパネルが贈られた。今回のプレミア放談はジェラードを語り尽くす。 (C) Getty Images

田邊雅之:ジェラード、いよいよイングランドで見納めの時が近づいてきましたね。
 
山中忍:前節もスタンフォード・ブリッジでの「さよならツアー」が終わったところで。同点ゴールも決めたし、スコアも1-1できれいな締めになったかなと。
 
田邊:メディアの報道もセンチメンタルなトーンが強かった。『ガーディアン』あたりまで「彼の姿を見られなくなるのは、心が痛む」といったような、ベタな見出しの記事を載せていましたから。
 
山中:たしかに。例のヘディングシュートにしても、普通なら「ノーマークだったから決めて当然」とか書かれたりするんですけど、「あそこでクロスの落下点にきちんといたことがすごい」と持ち上げられていた。
 
田邊:ジャンプもしませんでしたね。まあ、口さがないイングランドのメディアも、今回はさすがにレジェンドに気を遣ったと。
 
山中:意地の悪い記事を載せたのは、『デイリー・ミラー』くらいかな。ジェラードが途中交代で、観衆の拍手に応えながらピッチを後にしていく場面のカットを使ったんですが、そこには「We Are the Champions」というチェルシー側の横断幕がしっかり映り込んでいて。記事のメインタイトルも「Last Anguish(最後の苦悶)」だった(笑)。
 
田邊:気の毒ですよね。おまけに今回は「ガード・オブ・オーナー」(優勝を決めたチームを、対戦相手の選手が出迎える役回り)までやらされている。
 
山中:ジェラード自身、試合が終わった後には「いい気持ちがするわけないじゃないか」というコメントを出していました。スタンフォード・ブリッジだけでは、やりたくなかったでしょうね。
 
田邊:モウリーニョ時代のチェルシーとは、とくに因縁がありますからね。以前、ミラーのサイモン・マロックを通じてコメントを取ったんだけど、その時もチェルシーに2回、本気で移籍しかけたと告白していた。頭のどこかでは、こっちに移籍していたら、どんなキャリアを歩んでいただろうと思ったりしていたのかもしれない。
 
山中:実現するチャンスがあっただけにね。しかも昨シーズンは、優勝まで秒読みと言われていた状況の中で、チェルシー戦で派手にこけたじゃないですか。あれでゴールを奪われて0-2で試合に負けて、タイトルからも「滑り落ちて」しまった。
 
田邊:相変わらず、口が悪い(苦笑)。
 
山中:いやいや、僕の周りに座っていたチェルシーファンよりはましですよ。「スリップ注意」のパネルを見せつけるような真似はしませんでしたから(笑)。

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