【連載】識者同士のプレミア放談「チェルシーはなぜ、プレミアの覇権を奪回できたのか」

2015年05月05日 田邊雅之

プレミアの優勝はやっぱり特別なんだとひしひしと。

モウリーニョ再任2年目で、5シーズンぶりの覇権奪還を果たしたチェルシーを語り尽くす。 (C) Getty Images

田邊雅之:チェルシー優勝、おめでとうございます! ちょっと声がかすれぎみなのは、スタンフォード・ブリッジで大騒ぎしすぎたからですか?
 
山中忍:なんといってもリーグ優勝ですから。声が嗄れたこともあるし、これから軽くシャンパンをあおって、喉の乾きを潤そうかと思っていたところです。
 
田邊:パレス戦はスコアこそ1−0でしたけど、かなり堂に入った戦い方ができていたし、アザールはプレミアの年間最優秀選手賞も取っている。盆と正月がいっぺんに来たってやつですかね。
 
山中:正直、クリスタル・パレスは割と調子が上がっていたので、もう少しきわどい場面があるのかなと予想していたんです。でも全体的には、まあ安心していられましたね。
 
 前半は今シーズンの序盤戦のような感じで積極的にゴールを狙いにいき、ハーフタイム間際にPKでリードを奪う。アザールは相手GKとの"ワンツー"で得点! そして後半はゲームの主導権を握りつつ、相手を掌で転がしていくという。
 
田邊:いかにもモウリーニョらしい戦い方。山中さん同様、僕もパレスがもうちょっとチェルシーを苦しめるのかなと思っていたんですけどね。
 
山中:ぶっちゃけた話、パレスは上位に食い込める目があるわけでもなければ、降格圏を脱出するために必死になっているわけでもない。そういう具体的な目標のないチームとしては、良い戦い方ができていた。
 
 その辺りはモウリーニョも試合後に認めていました。「11人で守って、縦にボーンと蹴るだけだったが」と、釘を刺すのも忘れていませんでしたけど(笑)。
 
田邊:それはそうと5年ぶりの優勝というのは、どんな心境ですか?
 
山中:イングランドにいる人間にとって、プレミアの優勝はやっぱり特別なものなんだなあというのは、ひしひし感じますよね。逆に他のチームが優勝した年なんかは、「カップ戦の優勝だって立派な王者だ」と自分に言い聞かせたりしますけど。
 
 それと改めて思ったのは、モウリーニョ政権の第一期にアブラモビッチ(オーナー)との確執が生まれていなければ、もっと優勝回数が増えていただろうなと。ベニテスが監督をしていた時期さえあったなんて、なんだか信じられないですよね。
 
田邊:たしかにチェルシーはモウリーニョの印象が強いけど、他にアブラム・グラントだとかスコラーリ、アンチェロッティさえいましたからね。
 
山中:グラントを入れてディ・マッテオを忘れちゃダメですよ。ファンに愛されたCL優勝監督ですから。
 
田邊:失礼しました(笑)。そういえばヴィラス・ボアスやレイ・ウィルキンスが監督を務めた時代まであった。
 
山中:AVBことヴィラス・ボアスは、監督名の頭文字表記を流行らせてくれましたけどね。ファン・ハールはLVGとか。でもクラブ史上に痕跡はもう……。1枚のアルバムに参加しただけで、すぐにバンドをクビになったボーカリストみたいです。僕が好きなヴァン・ヘイレンというバンドにも、そんなボーカリストがいましたが。もの凄く個人的な趣味に寄った喩えでスイマセン。
 
田邊:いやいや、日本の読者の方に、山中さんの素顔を知っていただくいい機会だということで(苦笑)。でも監督が頭文字表記に進化した割には、サッカーはあまり進化しなくて、AVB時代以降はマンチェスター勢にしてやられていた。
 
山中:たしかに。だから04-05シーズンに半世紀ぶりの優勝を遂げた時のようにウルウルしたりはしませんでしたけど、去年はモウリーニョが戻ってきたのにプレミアを取れなかっただけに、余計に感慨深いんですよ。テリーなんか泣いてましたもんね。

次ページ補強の成功と状況に応じた戦い方ができたこと。

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