連載|熊崎敬【蹴球日本を考える】物足りなさが残った浦和とG大阪の頂上決戦

2015年05月03日 熊崎敬

システム上の相性の良さを、浦和はなかなかスコアに反映できなかった。

大一番に並々ならぬ決意を抱いていた浦和。勝点3という結果は手にしたが、内容には課題も見え隠れした。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 第1ステージの優勝の行方を大きく左右する大一番は、ホームの浦和に凱歌が上がった。この勝点3は、システムの勝利と言っていい。浦和はシステム上の優位性を活かして終始ゲームを支配し、G大阪になにもさせなかった。

【J1 PHOTOハイライト】 浦和 1-0 G大阪

 浦和の3-4-3とG大阪の4-4-2が対峙すると、大抵、前者が主導権を握ることになる。なぜか。ボールを持った浦和は3トップ+2ウイングバックの5人が最前線に目いっぱい広がるため、G大阪の4バックでは手に余る状況が生まれるからだ。

 G大阪としては、ゴールに直結する中央の3人、ズラタン、梅崎、武藤を警戒しなければならず、そうなると大外の平川、宇賀神へのマークが緩くなる。このふたりが高い位置で前を向いて仕掛ける場面が多くなるのは、そのためだ。

 G大阪も、この状況を傍観しているわけではない。サイドMFの大森と倉田が宇賀神と平川をそれぞれケアしようとするが、こうなると最終ラインに吸収される形になり、中盤の枚数が足りなくなってしまう。

 最終ラインの数的不利を埋めようとしてサイドMFが下がることで、中盤が数的不利になり、浦和の押し上げを招いてしまう。必然的にボールを奪う位置も低くなり、効果的なカウンターを繰り出すこともできない。すべてが後手になってしまう。

 このようにミシャ流3-4-3は、G大阪が採用する4-4-2とは相性が良い。昨年11月に行なわれた埼スタでの首位攻防戦でも、前半は右サイドの平川がほとんどフリーの状態でクロスを何本も上げていた。

 もっともシステムの相性の良さは、なかなかスコアに反映されない。それは浦和がフィニッシュに課題を抱えているからだ。

 この日も浦和は、G大阪ゴールを押し包むように攻め続け、CKの数でも9対1と圧倒した。CKが多いということは、それだけ平川と宇賀神が高い位置で仕掛けているということを意味する。

 だがG大阪を押し込みながらも、ゴールが生まれる気配は希薄だった。それは数的優位に甘んじて横へのパスが増え、リスクを負って仕掛けていくプレーが少ないからだ。

 加えてフィニッシュの精度も低い。この試合に限らず、浦和はシュートが枠を捉える場面が少ない。

次ページ勝者が素晴らしかったというより、敗者に問題があった。

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