連載|熊崎敬【蹴球日本を考える】戦術・技術で敵を圧倒した柏。肉弾戦でも戦う姿勢を失わず

2015年04月23日 熊崎敬

柏は全北の圧力を怖がらず、中盤のパスワークで勝負した。

柏は前半で3点のリードを奪う。技術的にも戦術的にも柏は全北を上回っていた。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

 終了間際、クリスティアーノが強引にシュートを撃ったところから逆襲を食らい、柏はCKのピンチを迎えた。嫌な予感を覚えたファンも多かったはずだ。だが柏はCKを弾き返し、直後、終了の笛が鳴る。3-2の勝利、そしてグループステージ首位通過が決まった。

【ACL5節PHOTOハイライト】柏 3-2 全北現代
 
 この試合も含めて柏はACLで過去6度、全北と対戦、5勝1分けと圧倒している。だが全北は、昨年9月から公式戦27試合無敗を続けるKリーグ屈指の強豪。そんな難敵を撃破したところに柏のたくましさが見て取れる。
 2012年、13年に続くベスト16進出。グループステージ敗退が一度もなく、苦戦が続く日本勢の中でもっともアジアに強いチームと言えるだろう。
 
 前半は柏が完璧に近いプレーを見せた。9分、エドゥアルドがCKからヘッドを決め、20分、39分に武富が加点する。
 
 快調な試合運びの原動力となったのは、茨田、大谷、栗澤が組む中盤のトライアングルだ。
 吉田監督は、試合運びの狙いを次のように明かした。
「圧力が強く、これといった穴のない全北に対して、どこで優位に立てるか。スタッフで話し合ったんですが、それは中盤だということで一致した。中盤で勝つ、中盤でどのように時間を過ごすかが、この試合のカギになると考えた」
 
 柏は全北の圧力を怖がらず、中盤のパスワークで勝負する道を選んだ。これが功を奏する。全北は、中盤の最後尾でひとりでパスをさばく茨田に圧力をかけようとしたが、彼はノーミスに近いさばきを見せ、文字通り敵を寄せつけなかった。これには絶妙なタイミングでパスコースに顔を出した大谷、栗澤のベテラン勢のサポートによるところも、もちろん大きい。
 
 雨で濡れたピッチに、スタッカートの心地よいリズムで次々とパスが通る。中盤の3人が全北を揺さぶり、フリーになった右のクリスティアーノ、左の武富が面白いように背後を取った。3ゴールが生まれ、勝負は前半で決まったかと思われた。

次ページ舐められたら終わりだ、という勝負への厳しさが柏には根づいている。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事