「部屋からは怒鳴り声の応酬が…」トゥヘル監督の残酷な解任劇はなぜ起きた? パリSGから追放された“3つの理由”【現地発】

2020年12月27日 結城麻里

電撃的な解任劇の舞台裏が明らかになってきた

まだ公式発表はされていないが、解任が既成事実となっているトゥヘル監督。(C)Getty Images

 トーマス・トゥヘル監督解任の舞台裏が徐々にわかってきた。それはやはり、残酷だった。

 リーグ・アン前半最終日となった12月23日、パリ・サンジェルマンは日本代表GK川島永嗣がゴールマウスを守るストラスブールを4-0で下し、内容こそいまひとつだったものの、シーズン前半戦を勝利で締めくくった。順位は3位だったが、首位に並ぶリヨン、リールとの勝点差はほんの1ポイントだ。

 試合直後にトゥヘル監督は恒例の記者会見に臨み、選手たちの真剣な努力を称え、「(シーズン)最後まで戦い抜く。われわれはチャンピオンで終われると信じている」と語っていた。このときは、背後の廊下で解任劇が進行しているとは思ってもいなかった。まもなく24日になろうとしていた。監督にしてみれば、この勝利は選手たちからのいいクリスマスプレゼントだっただろう。

 ところが記者会見後、スポーツディレクターのレオナルドはトゥヘルをロッカールームの隣室に呼び出して、解任を通告。指揮官はがく然としたものの、反論を開始し、やがて怒鳴り声の応酬となり、1時間ほど続いたという。解雇理由の明確な提示はなく、「いろんなことの積み重ね」とけむに巻いたような表現だったそうだ。
 
 しかも、すぐに出て行かねばならなかった。この後、トゥヘル監督とスタッフは、パリから離れた郊外にあるトレーニング場「カン・デ・ロージュ」に真夜中の移動を強いられ、全ての荷物をまとめて去る羽目になった。人生最悪のクリスマスを意地悪にプレゼントされたような感覚だったに違いない。

 「ほんの4か月前にクラブ史上初めてチャンピオンズ・リーグ(CL)のファイナルに進出した監督を窓から投げ捨てるクラブなんて、他にあるだろうか」――。さすがの『L’EQUIPE』紙もこう綴り、「こんなクラブはどこにもないという評判に、またひとつ石を投げ込んだ」と皮肉った。

 トゥヘル監督の去就は、レオナルドと衝突した10月ごろに最も危機的になったが、その後はやや落ち着いていた。契約は来年6月に切れる予定で、レオナルドが更新提案をしなかったため、いずれはパリを去る運命にあった。ただ、まさかこのタイミングで斬首されるとは、誰も思っていなかった。

次ページネイマールは失望、エムバペはいち早くメッセージを送る

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事