「移籍考慮は時期尚早だ」なぜ南野拓実は出場機会を与えられないのか? リバプール番記者に訊く“リアル評”【現地発】

2020年12月04日 ジェームズ・ピアース

南野はレギュラーを奪うとは考えられていない

リバプールで苦戦が続いている南野拓実の現状をリバプールの番記者はどう見ているのか? (C) Getty Images

 今シーズン開幕当初、南野拓実の機は熟した。そう感じ取っていた。

 今年1月にオーストリアの強豪レッドブル・ザルツブルクからリバプールに移籍した南野だったが、昨シーズンは自身が思い描いていた活躍ができなかった。プレミアリーグ王者の証となるメダルを得たものの、リーグ戦で先発出場したのは2試合のみ。ゴールとアシストはいずれもゼロでシーズンを終えた。

 とはいえ、ユルゲン・クロップ監督は日本代表FWの苦戦を意にも介していなかった。指揮官は常々、南野の獲得は長期的なプランの一つで、新しい国と言語、プレースタイルに慣れるまでは時間がかかるものだと話していた。フィジカルが求められるイングランド・サッカーに慣れ、チームが求める戦術にも対応していく必要があったからだ。

 そして迎えた今夏。南野はプレシーズンで好調を維持した。ウェンブリー・スタジアムで行なわれたプレミアリーグ開幕の前哨戦であるアーセナルとのコミュニティーシールドでは、途中出場ながらゴールを決めて見事アピールに成功した。

 この時、クロップ監督は南野についてこう語っていた。

「私は常に、タキ(南野の愛称)には時間が必要だと話していた。今、その状況は大きく変化した」
 
 この指揮官の言葉通り、25歳の日本代表FWは自信を深めていた。シーズン開幕間もない9月24日に行なわれたリーグ・カップ3回戦のリンカーン・シティ戦では2ゴールを挙げ、チームの大勝(7-2)に貢献した。

 しかし、だ。シーズン開始から約3か月経過した現時点での南野は、リバプールの主力選手の役割からほど遠い位置にいる。直近のブライトン戦(プレミア第10節)で先発フル出場を果たしたとはいえ、それ以前のリーグ戦では、合計58分の出場時間を与えられただけ。また、チャンピオンズ・リーグでの先発機会も格下のミッティラン戦のみで、その際も60分しかプレーせずに、途中交代を言い渡された。

 なぜ、好調だった南野はなかなかプレータイムを得られないのか? それは、彼が世界最高水準のFW陣を擁するリバプールで、世界でも指折りの実力を持つ3トップとレギュラー争いをしようとしているからだ。

 モハメド・サラー、サディオ・マネ、ロベルト・フィルミーノとレギュラー争いをしながら、控えにいる現状は決して恥じることではない。そもそも南野は、"スカッドプレーヤー"として獲得されている選手でもある。

 彼はチームの層を厚くする存在であり、3人から早々にレギュラーポジションを奪うとは考えられていない。ザルツブルクが設定した725万ポンド(約10億1500万円)という契約解除の違約金は破格の安さで、リバプールには痛みをほとんど伴わない投資とさえ言えた。
 

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