【長友佑都インタビュー後編】「一番下手だった自分がプロの世界で生き残っているのは…」

2020年10月23日 松尾祐希

「自分の軸をしっかり持っていて、メンタルが強い選手はどんな状況でも自分のプレーができる」

世界で通用する選手の育成を目指す長友。自身の経験を育成指導に生かしていくつもりだ。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 今季マルセイユに加入した長友佑都はプロサッカー選手としてのキャリアも終盤を迎え、引退後の人生を見据えて2015年からスクール事業を行なっている。小学生を対象とした"YUTO NAGATOMO Football Academy"は現在3校。来年2月には矢板校がオープンする予定で、自身の経験を伝える場として精力的に携わっている。

 そのスクールで重視しているのが、技術の向上とともにメンタル面。コミュニケーション能力、挨拶、感謝の心を育むことに力を入れてきた。そのようなメンタリティがあれば、普段の取り組みも変わってくる。努力や継続する心が自ずと養われていく。何故、長友は礼節を重んじ、人間力を高めるべきだと考えているのか。それは自身の経験が根底にある。

「才能や技術があるのに少しプレッシャーが掛かったり、うまくいかない状況になると、一気に落ちてしまう選手を僕は見てきました。技術が劣っていたとしても、自分の軸をしっかり持っていて、メンタルが強い選手はどんな状況でも自分のプレーができる。そのためには技術トレーニングだけではダメで、ブレないメンタルを育んでいかないと上にはいけない」

 東福岡高時代、長友は大きな注目を集めるような選手ではなかった。しかし、誰よりも練習をし、チームでの居場所を自分の足で作り上げた。

「高校時代はきついことがありすぎた(笑)。中学の頃もそうだったけど、厳しい練習はたくさんあった。一番キツかったトレーニングって言われると思い出せないレベルでいろんなのがあったし、そういう練習を乗り越えてきた。それを思うと、プロになってからの苦しさは大したことない。学生時代に戻れと言われても戻れないし、学生時代のようなメンタルの強さもない(笑)。それぐらい当時は追い込んでいたから。高校の練習は大変だったけど、自分でも朝起きてトレーニングをして、夜もナイターの灯りが消えた後にひとりで自主練習をしていた。なので、自分で追い込んでいた点も含めてキツかったのを覚えている」
 

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