“清算王”バルトメウの罠にはまったメッシ「怒りに任せて判断を誤った」【現地発】

2020年09月02日 エル・パイス紙

フロントからの盲目的な神格化がメッシを混同させた

バルトメウ会長(左)ら上層部への不満が我慢の限界に達し、三下り半を突きつけたメッシ。もはや修復は不能か。 (C)Getty Images

 バルセロナというクラブは何かにつけて物事が誇張される。年月の経過とともにその傾向は一層強まり、過去の事象を超えた型破りな騒動が起こる。しかも厄介なのはターゲットとなる選手の"格"によってその程度が変化することだ。その対象がリオネル・メッシのように神格化された選手であれば格好の餌食となり、騒動はとてつもない次元にまで膨らむ。

 今回の一連の去就騒動でメッシが初動対応を誤ったのもまた事実だ。キャプテンともなればチームが苦境に陥った時にこそ、チームメイトとその責任を共有しなければならなかった。

 とはいえ選手は年齢を重ねる。それはメッシとて同様だ。いつまでもゴールを量産し、相手DFを切り裂き、局面を打開し、チームを勝たせることができるとは限らない。しかしバルサはトリノ、パリ、ローマ、リバプールのチャンピオンズ・リーグ(CL)のアウェーゲームで大敗を繰り返しても、ジリ貧への道を突き進み続けた。そしてその結果がリスボンでの2-8という記録的大敗であった。

 生来の負けず嫌いのメッシにとっては耐えられない屈辱だったのは言うまでもない。怒りの矛先はジョゼップ・マリア・バルトメウ会長をはじめとするフロントに向けられ、新たに監督に就任したロナルド・クーマンもその一味と見なした。ジェラール・ピケ、セルジ・ロベルト、セルヒオ・ブスケッツをチームに残すなか、親友のルイス・スアレスに構想外を伝えられた政治的判断がその疑惑をさらに増幅させた。

【動画】退団の要因に…大敗したバイエルン戦のハーフタイムにメッシが茫然自失とする衝撃シーンはこちら
 メッシという圧倒的な個の力を持った選手の存在がバルサを伝統のプレーモデルから隔離させたと言われるが、それは彼が意図したところではない。フロントからの盲目的な神格化がメッシを混同させ、自らをヨハン・クライフが残したレガシーやジョゼップ・グアルディオラ率いるバルサのハーモニーを奏でるようなパスサッカーを超えた存在であると考えさせるに至ったのだ。

 しかしそれは成功を我が物としたいバルトメウの思う壺だった。からくりはこうだ。メッシには、史上最強のプレーヤーとしてありとあらゆる便宜を図る。それは毎シーズン終了後に契約を一方的に解除できる条項まで盛り込むほどの用意周到ぶりだった。

 すべては両者の悲願となっているCLを奪還するためだったが、仮にそれが叶わなくても、メッシに代償を払わせればいい。来年に任期満了を控えて赤字の帳消しに躍起になっているバルトメウにとってはそれもまた好都合だ。今の彼にとっては、クラブ経営の失策をいかに取り繕うかが最優先課題であり、スポーツ面は完全に二の次の位置づけになっている。
 

次ページ望むものは何でも与えてきたメッシが自らを否定していることに我慢ならない

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