【日本代表戦術検証】突き詰められなかった守備の形

2015年01月24日 清水英斗

攻撃では輝きを放った中盤のトライアングル。

攻撃時は一列下りて、3バックの中央でパス回しに参加した長谷部。守備面でも味方を助けたが……。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 アジアカップ準々決勝のUAE戦。1-1で迎えたPK戦に敗れ、日本代表はオーストラリアの地を去ることになった。

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 第一の敗因は、星の数ほど作ったチャンスを決め切れなかったこと。そして第二の敗因には、"油断"を指摘したい。
 
 大会前、筆者は吉田麻也にこんな質問を投げかけた。
 
「普段、(エデン・)アザールのような選手に対する守備に比べると、アジアカップでは、もう少しチャレンジのタックルに行けるとか、守備の気持ちの面で変わるところはありますか?」
 
 すると、彼はこう答えた。
 
「まあ、そういう気持ちになりがちですよね。だからこそ、そこは自分を律して、常に高いものを求めてやっていかなきゃいけない。その油断を、特に中東のチームは突いてくると思うので」
 
 この言葉は強く印象に残っている。吉田が表現する"高いもの"とは、なんだろうか? 
 
 おそらくそれは、世界で通用するサッカー、という意味だろう。アジアだから多少のポジショニングのズレも問題にならない、あるいは集中力の欠如もごまかせる、そういうことではない。世界の舞台でも、同じように戦えるクオリティ。それが目指すべき「高いもの」だ。
 
 この視点で考えた時、長谷部誠をアンカーとする中盤の三角形には、グループリーグの時点から不安要素があったと言わざるを得ない。
 
 攻撃については、満足できるものだった。長谷部が一列下りて、3バックに変形することで相手のプレスをかわし、それでもかわし切れなければ、遠藤保仁が、さらには香川真司が相手のFWとMFの間に顔を出して、縦パスを引き出す。
 
 森重真人や吉田が持ち上がって、縦パスを入れる場面では、香川や遠藤が相手ボランチのマークを引き付け、空いたスペースに本田圭佑や乾貴士が中へ絞って入り、縦パスを受ける。こうしたコンビネーションは試合を重ねるたびに、美しさを増した。

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