バルサに蔓延する“ウイルス”――メッシの声明でフロントとの溝はもはや修復不能に…【現地発】

2020年04月05日 エル・パイス紙

真っ先に批判されるのはニューカマーという構図が

今回のメッシの声明は一致団結を呼びかけるものだったはずだが……。(C) Getty Images

 コロナ渦に見舞われても、カンプ・ノウに"停戦"が訪れることはない。いや、選手とフロントの亀裂は、パンデミックを境にさらに拡大した感すらある。

 今回の火付け役となったのはリオネル・メッシだった。カピタンの言葉は言うまでもなくバルセロナという巨大な山をも突き動かす強烈な威力を持っている。

 メッシは自身のインスタグラムで、給与70%カットの受け入れと、クラブ職員に支払われる賃金の削減分を補填する旨を、チームを代表して発表するとともに、フロント内に自分たちの行動を逐一チェックしながら、圧力をかけた人物がいることを明らかにした。

 両者の対立は今に始まったことではない。フロントの稚拙なマネジメントが発端となって今シーズンが開幕してからも内紛続きだったが、そうした過去の遺恨を踏まえてメッシが今回の批判に踏み切ったのは間違いない。
 
 もっともジョゼップ・マリア・バルトメウ会長はメッシと向こうを張ろうとしても、はなから負け戦に臨むようなものだ。バルサがベルリンで最後にビッグイヤー(チャンピオンズ・リーグの優勝トロフィー)を掲げて以来、フロントはその功労者たちのご機嫌を取ることに躍起になってきた。

 その一戦で先発したメンバーのうち、ダニエウ・アウベス、ハビエル・マスチェラーノ、アンドレス・イニエスタ、ネイマールが自らの意志で退団した。この中で現在復帰を望んでいるのはネイマールのみ。その他は誰一人としてカンプ・ノウを去ったことに後悔の素振りを見せている者はいない。

 その一方でメッシを筆頭としたルイス・スアレス、ジェラール・ピケ、セルヒオ・ブスケッツ、ジョルディ・アルバらが残留組になるわけだが、彼ら古参選手の実力が錆び付いたわけではない。問題は発言力が増幅して、クラブのマネジメント、あるいは監督の采配にまで口を挟むようになった点にある。

 今回の給与カット問題にしても、元はといえば選手の思うままに年俸が急騰して首が回らなくなったからに他ならない。たしかに彼らはピッチで結果を手にし続けている。ラ・リーガは連覇中で、一昨シーズンにはコパ・デル・レイも制覇。チャンピオンズ・リーグ(CL)にしても、前述の2014-15シーズン以来ビッグイヤーから遠ざかっているとはいえ、毎シーズン信頼に足るだけの成績は残している。

 そうした実績を盾に影響力を高め、タイトルを逃しても自分たちは無傷で真っ先に批判されるのはウスマンヌ・デンベレ、フィリッペ・コウチーニョ、アントワーヌ・グリエーズマンといった新参者という構図が完全に出来上がっているのだ。

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