エムバペの夢、砕ける? パリSGが東京オリンピック派遣を拒む文書を連盟に送付。その背景とは?【現地発】

2020年03月06日 結城麻里

エムバペ以外の五輪メンバー候補もパリSG側が招集拒否か

EURO出場も期待されるエムバペ。五輪への道は険しそうだ。 (C) Getty Images

 フランス最大のスポーツ紙『L’EQUIPE』は現地時間4日、パリ・サンジェルマン(パリSG)がフランスフットボール連盟(FFF)に対して、キリアン・エムバペの東京オリンピック出場に反対する旨の書簡を送付していた、とスクープした。

 エティエンヌ・モワティ記者執筆の同記事によると、パリSGがこの書簡を送付したのは先週末。詳細な文面そのものは明らかにされていないが、エムバペやほかの選手をオリンピックのために解放するつもりはないことを連盟に伝えたという。

 パリSGには、エムバペの他にもフランス人の選手としてアブドゥ・ディアロ、コラン・ダグバがおり、エスポワール・フランス代表のシルヴァン・リポル監督が作成した80人のプレ・リスト(事前招集リスト)に名を連ねている。

 このプレ・リストはやがて50人に絞られ、次いで本格的なリスト作成に入る予定だ。パリSGの拒否姿勢に変更がなければ、フランスのオリンピック代表リストからは、3人もの重要候補が外されてしまうことになる。

 もっともパリSGは、同様の書簡をスペイン連盟にも送付したようだ。これによりスペインでも、アンデル・エレーラ、ファン・ベルナト、パブロ・サラビアの3人がオリンピック出場リストから外されることになる。

 ブラジル代表のネイマールも、オリンピック出場を希望しているようだ。しかしこちらは、今のところブラジルサッカー連盟から正式な招集要望は届いていないらしい。もし招集の要望が届けば、ネイマールの派遣にも反対するとみられる。

 クラブが招集に反対するの理由は、選手たちがEURO2020やオリンピックという国際的なビッグコンペティションに続けて参加することで、7月末から8月初旬にとるはずのバカンスがずれ込み、リーグ開幕への準備、開幕そのものに支障をきたす点だ。他のビッグクラブも同様の悩みを抱えており、欧州クラブ連合(ECA)は、雇用選手の東京オリンピック出場に反対する声明の発表を検討しているという。

 フットボールの各クラブには、国際サッカー連盟(FIFA)に属さない機構が主催するコンペティションに「選手を解放しなければならない義務」がない。背景にはFIFAと国際オリンピック委員会の対立も見え隠れしており、ワールドカップの輝きがオリンピックの陰に隠れるのを望まないFIFAとしては、各クラブに選手のオリンピック出場を推奨する気は毛頭なさそうだ。

 このため、パリSGが拒否姿勢を変えない場合、エムバペの夢は砕かれてしまうことになる。

次ページ本人が熱望していることは確かだが…

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