2020年の“リアル”南葛SCが掲げる「ワクワクするサッカー」――公式戦での試みから見えてきたのは…

2020年02月28日 伊藤 亮

「誰がどのポジションという固定概念はまったくありません」

トップチームのオーナーとしてクラブを支える『キャプテン翼』原作者の高橋陽一先生。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 現在行なわれている東京カップ(東京都社会人サッカーチャンピオンシップ)は、大事な東京都1部リーグ戦開幕前の重要な試金石だ。
南葛SCの2020年の取り組みを知るヒントは公式戦にあり。
その思いで現場に赴いてみると、これまでとはまた違った試みが行われていた。
この試みがいかに「ワクワクするサッカー」につながっていくのか。
監督と選手の言葉からその狙いが見えてきた。

――◆――◆――

 島岡健太新監督になって、南葛SCは2月28日時点で公式戦を3つ戦った。東京カップ(東京都社会人サッカーチャンピオンシップ)一次戦の3回戦ではHOSEI Football Lab(今期より都1部)に3-0、4回戦の三井住友海上サッカー部(都2部)に1-0、一次戦決勝の警視庁サッカー部(都2部)に6-2という成績だ。

「今は自分たちができるサッカーを見極めていっている段階。システムに人をはめるでもなく、戦術に人をはめるでもない。自分たちが一番楽しくサッカーをするためには人ありきだと思います」

 島岡監督がこう言うように、多くの選手を様々なポジションで起用しているのが特徴的だ。試合中もポジションやフォーメーションを変え、どの形にしたらどんなサッカーになるのかを公式戦で試している。

「誰がどのポジションという固定概念はまったくありません。どのポジションに誰が入ったらどんなサッカーになるのか。僕もワクワクしながらやっていく」

 例えば昨シーズンから南葛SCに加入し、主にオフェンシブなポジションでプレーしていた能登正人がCBに入っていたりする。得点能力に優れている一方で、足もとの技術がありボールキープに長けた個性をCBで活かしたらどうなるのか。このような試みが選手それぞれに対して行なわれている。日々の練習を見ながら想像力を膨らませ、誰をどこに配置するか、また誰と誰を組み合わせるかで、実戦ではどのような化学変化がもたらされるのかを見極めようとしている。

 三井住友海上サッカー部戦で決勝ゴールを挙げた安田晃大前キャプテンは、これまでとの感覚の違いを口にする。
「三井住友海上サッカー部戦だったら、最初シャドーをやって、次にトップ下をやって。練習でもそれほど回数をこなしていないようなフォーメーションなど、いろんな形を試合の中で試しています。3バックだったり4バックだったり、中盤の枚数や組み合わせも変えていく。その中で自分も去年と違うポジションをやっているし、他の選手もそうです。その変化に合わせて変わっていく目線に慣れていこうとしています」
 

次ページ「注目するのは“相手に関係なく自分たちのつながりが見えたシーン”」

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事