「表舞台から消えた33歳にすがるほど最悪な状況」「ファンは幻想を…」本田圭佑のボタフォゴ移籍をブラジル人記者はどう見たのか?【現地発】

2020年02月10日 リカルド・セティオン

こんな状況であることを本田は分かっていたのか?

ボタフォゴのファンから熱烈な歓迎を受けた本田。期待は高まるばかりだが……。 (C) Getty Images

 本田圭佑の名前を聞いて思い浮かぶことがある。

 今から数年前のこと、私はTV中継でセリエAのミラン戦を見ていた。相手の守備は堅く、ミランは攻めあぐねていた。しかし、その流れを一人の日本人選手が見事に変えてしまった。試合後に彼はマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた。それが本田だった。

 日本は私にとって特別な国のひとつだ。その日本の選手が、イタリアで活躍するのを見て、どこか誇らしい気持ちになったのを覚えている。

 それから数年後、本田は文字通り鳴り物入りでここブラジルにやってきた。サポーターが空港に詰めかけ、背番号入りのユニホームが飛ぶように売れ、まさに英雄扱いである。しかしフィーバーが大きくなればなるほど、心配になってくる。

 本田は確かにいい選手だ。それは疑う余地はない。しかしその目の前には多くの問題が山積みされている。
 

 ひとつは本田が選んだボタフォゴというチームの問題だ。

 この名門クラブは現在、非常に難しい状況にある。とくに財政面の問題は深刻で、クラブはゴタゴタを抱えている。

 本田はこれまでに何度も、オファーは、他のチームからもいろいろあったと発言している。ヨーロッパにもアジアにも。しかし最終的に移籍先に決めたのは、言葉も習慣も知らないブラジルの、それも深刻な問題を抱える、給料も安いチームだった。彼の言葉を信じるならば、ただサポーターの愛に応えるために……。

 おそらく世間では空港での熱烈な歓迎ぶりや、土曜日のプレゼンテーョンイベントといった明るい話でいっぱいだとは思う。確かにそれらは例を見ない盛り上がりだった。

 ただ空港に詰めかけた2000人を超えるサポーターが、少なくとも25回は「FORAVALENTIM(ヴァレンティン出ていけ)!」と叫び、「OOO MUFARREJ O BOTAFOGO NAO PRECISA DE VOCE(オー、ムファレジ、ボタフォゴにはお前はいらない)」と歌ったことはあまり報道されていないだろう。ヴァレンティンは監督の名前、ムファレジは約半年前に就任したクラブの会長の名前である。

 つまりボタフォゴはまだ開幕から1か月も経っていないのに、監督や会長の解任を求めるほど調子が悪いのだ。本田が到着する2日前にも、ボタフォゴはカシアスという全国リーグでもプレーしたことのない小さなチームに負けて、2月9日にはフルミネンセに0-3で完敗。試合後、ヴァレンティン監督は実際に解任されてしまった。

 本田は、チームがこんな状況であることを分かったうえで、ここに来たのだろうか?
 

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