プレミアで成長し、サウサンプトンに愛された吉田麻也。英国での7年半を振り返る/前編【現地発】

2020年02月08日 田嶋コウスケ

仲間から愛されたエピソードとは?

サウサンプトンで7年半もの時間を過ごした吉田。そのキャリアを振り返る。 (C) Getty Images

 今から遡ること、約4年半前。サウサンプトンの吉田麻也がペナルティーエリア外から左足で振り抜いたボールは、ゴール右下に吸い込まれた。

 技アリのミドルシュートを目の当たりにして、沸き上がるサウサンプトンのスタンド。すると、タッチライン際に向かい一目散に駆けていった日本代表DFが目指したのは、アップ中のセルビア代表MFドゥシャン・タディッチ(現アヤックス)。二人は笑顔で抱擁を交わした。

 2015年10月に行なわれたリーグカップのアストンビラ戦で、サウサンプトンは吉田のゴールにより2−1で勝利した。値千金の一撃を決めた吉田は、なぜタディッチの元に走っていったのか。試合後、その理由を明かしてくれた。

「試合前に軽食をとっていたら、突然ドゥシャン(タディッチ)が『今日はマヤが点取るよ』と言い出したんです。『味方とのワンツーで抜け出して取る』って(※実際、そのとおりの得点)。『じゃあ、点とったら、お前のところに行くわ!』と試合前に言っていたんですよ。走っていったら、ドゥシャンに『言ったやろー!』と言われて。かなり盛り上がりましたね(笑)」

 おそらくタディッチは、練習のなかで吉田のコンディションが良好なこと、積極的なプレーが増えていることを肌で感じ取っていたのだろう。吉田にとって、約10か月ぶりのゴールを思いつきだけで的中させるのは、簡単ではない。

 吉田がオランダ1部のVVVからプレミアリーグのサウサンプトンに移籍したのは、ロンドン五輪後の12年8月。以降、24歳から31歳までというキャリアの最も大事な時期を、英国南部の港町で戦った。その間、日本代表DFは選手として一回りも二回りも成長し、一人の男としても逞しさを増した。

 12年の入団時から行なってきた取材のなかで強く感じたのは、吉田がチームに深く溶け込んでいたことだ。

 チームの勝利に仲間たちと雄叫びを上げ、敗戦には一緒に肩を落とした。ピッチを離れても、選手たちと和気あいあいとじゃれあい、高度な英語力を駆使してスタッフともジョークを飛ばし合った。

 そんな吉田がサウサンプトンの仲間から愛されていたエピソードとして、筆者は先述の得点シーンをいつも思い出す。

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