伝統校が初戦で姿を消した――。
 
　３年ぶりに選手権の舞台に帰ってきた市立船橋。鈴木唯人（３年／清水エスパルス入団内定）、畑大雅（３年／湘南ベルマーレ入団内定）らを擁し、８年ぶりとなる冬の日本一も射程圏内に捉えていた。だが、初陣となった２回戦で日章学園に敗北。試合の主導権を握りながらも、０−０の末にPK負けを喫した。
 
　試合後、鈴木は号泣。畑も苦虫を噛み潰したような表情で天を仰いだ。
 
　優勝候補の一つに数えられていた市立船橋は、なぜ敗れたのだろうか。レギュラー格のふたりがベンチスタートになった影響もあるが、後半途中まで思うようにチャンスを作り出せなかった点が響いた。
 
　振り返れば、ボールを支配していたのは市立船橋だった。４−４−２のシステムで臨むと、ボランチの一角が最終ラインに落ちてビルドアップ。両サイドバックが外でボールを受け、縦に速い攻撃を仕掛けようとした。だが、序盤は相手の守りに封じられ、狙い通りの形が作れない。前線にボールが入っても収まらず、サイドを深く抉る場面は限られた。
 

「日章学園さんがブロックを敷いていたので、もう少し効果的な崩しから中央突破を試みるシーンを作れていたら、もっとサイド攻撃が生きていた」とは波多秀吾監督の言葉だ。
 
　逆に前半20分を過ぎると、中盤でボールロストが散見し、日章学園に押し込まれる時間帯が増えた。それでも、後半は持ち直し、右サイドバックの畑がスピードを生かした突破で何度も局面を打開。61分には立て続けに絶好球を上げるが、松谷昂輝（３年）がいずれも合わせ切れなかった。
 
　ゴールを奪うために波多秀吾監督も動く。体調不良でベンチスタートとなったサイドアタッカー・森英希（３年）と左SB植松建斗（３年）を終盤に投入した。しかし、最後までフィニッシュの精度を欠き、スコアレスでタイムアップ。PK戦では、７人目の松谷がGKに止められ、日本一の夢は潰えた。
 
「後半はチャンスを作れていましたし、シュートも打てていたけど、ゴールが決められなかった」（波多監督）。
 
　決着を着ける機会があっただけに、悔やまれる敗戦だったのは間違いない。

【選手権PHOTO】日章学園 ０(７ＰＫ６)０ 市立船橋｜ＰＫ戦の激闘を制したのは日章学園