時代の流れを象徴した“パワハラ退陣”と“外国人枠変更”。劇的に知名度を上げたのは…【識者が選ぶ2019日本サッカー界の衝撃5大ニュース】

2019年12月28日 加部 究

ハラスメントの概念は知りつつも、まだどこかで「禁じ手」のドーピング的な効果を信奉する人たちが多数存在する

横浜の15年ぶりの優勝を支えた助っ人陣。「3+1」から「5」への変更をうまく活用したフロントの立ち回りが際立った。写真:徳原隆元

 2019年もあと残りわずか。今年も日本サッカー界には様々なニュースがもたらされた。そこで今回は、ライター陣にサッカー界を揺るがした5つの出来事をピックアップしてもらった。果たして、スポーツライターの加部究氏が選んだ衝撃5大ニュースとは――。

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1 久保建英の大ブレイク
 日本サッカー史上類を見ない大ブレイク。もはや多くを語る必要はない。

2 曺貴裁氏のパワハラ退陣
 時代の変革を映し出す象徴的な出来事だった。パワハラの概念が生まれて以来、雪崩れのように発覚して来たのは高体連の部活が中心だった。大所帯のサッカー部を統括し、誰も口を挟めない独裁的な立場で結果至上に邁進してきた名門高校の監督たちは、これまで「名将」と讃えられ尊敬される立場にあった。だが選手や親の意識、それにパワハラの証拠収集のツールや訴える手段もすっかり変わりつつある。こうした時代の流れに無頓着で、横暴を続けた指導者の姿は次々に露呈することになった。

 だがこの一件の現場はJ1の湘南である。トレーニングなどの日常が、社員やメディアも含めた衆人の監視下にあった。もちろんプロの現場でも一部でハラスメントの意識が希薄なのは重々承知しているが、J1のクラブでこれほどの被害が生まれながら、当事者が訴えるまで誰も声を上げなかったという実情が闇の深さを物語る。表層的に曺監督の仕事ぶりは理想だった。大型補強が望めない財政面のハンディを跳ね返すかのように、若手を育てアグレッシブなスタイルで結果を導き出してきた。だから社長以下全員が「継続」のために犠牲を看過した。

 ただしこれは今までの高体連の部活の構図と変わらない。サッカーに魅了され上手くなりたいと入学してくる選手たちを理不尽なしごきでふるい落とし、耐えられた選手たちだけを引き連れて栄冠を勝ち取る。だがこのプロセスで拾い上げられるのは成功者の弁だけだ。もちろんプロと高校を同列で語ることは出来ないが、そこに切り捨てて良い人材などいない。結局ハラスメントの概念は知りつつも、まだどこかで「禁じ手」のドーピング的な効果を信奉する人たちが多数存在する。それを改めて思い知らされる事件だった。

3 外国人枠変更による新たな流れ
 特にJ1では、外国人枠が「3+1」から「5」に広がったことにより、助っ人選手たちの成否が明暗を分けた。象徴的だったのが横浜のJ1逆転優勝。前半戦の立役者だったエジガル・ジュニオが故障離脱すると、即座にエリキを補強。明らかにシティ・グループの支援が奏功した。また大型補強を続けて来た神戸も天皇杯では決勝進出。外国人選手の故障が重なり効果的に活用できず3連覇を逃した川崎とは対照を成した。国産タレントの空洞化を考えても、今後一層外国人の補強がカギを握る新しい流れの始まりを予感させた。

 

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