攻撃的に志向を転換!? マンUで“失敗した”モウリーニョはトッテナム監督就任で何が変わったのか?

2019年12月03日 内藤秀明

「ユナイテッドの選手たちに意見を求めた」

トッテナムの新監督に就任したモウリーニョ。チームにどのような変化をもたらしたのだろうか。 (C) Getty Images

 去る11月20日(現地時間)、トッテナム・ホットスパーは、前日に解任したマウリツィオ・ポチェッティーノの後任として、ジョゼ・モウリーニョを新監督として招聘した。

 2004年にチェルシーの監督に就任した際に、自らを"スペシャル・ワン"だと名乗り、血気盛んな若手監督だった男も気づけば56歳になった。情熱的なマネージメントと戦術的な創意工夫をあわせもつハイブリット型として名を馳せた名伯楽も、近年の評価は低落傾向にある。

 マンチェスター・ユナイテッドの監督だった昨年の今頃は、中心選手のポール・ポグバと衝突。さらに結果を求めるあまりに守備的な戦術に固執して職を追われ、メディアやファンには「時代遅れでは?」とも囁かれた。

 そんなモウリーニョが、プレミアリーグに帰ってきたのである。これまでの監督人生で、ほとんど長期の休暇を挟まなかったポルトガル人監督だが、今回は約1年の間で、じっくりと自らを見直して、再出発を切っている。

 ユナイテッドOBであるダレン・フレッチャーは、英公共放送『BBC Radio』で、「モウリーニョはユナイテッドを退団後、自身の振る舞いについて何人かの選手たちに率直な感想を求めて、次に生かそうとしたみたいだ」と語っており、当の本人も、トッテナムの就任会見で、「失敗したと理解している。同じミスは犯さないよ」と、ユナイテッド時代の反省を口にしている。

 これまでなかなか得られなかった自省期間のおかげか。トッテナム就任後の公式戦3試合でモウリーニョは、堅守という自身の色を残しつつも、珍しく攻撃的なスタイルを貫き、3連勝と結果を残している。

 では、モウリーニョはトッテナムの何を変えたのか?まず、依然として変わらない"らしさ"を挙げるならば、4-2-3-1のシステムを採用した部分だろう。

 そのなかでモウリーニョは、トップ下に中央のパスコースを90分間に渡って切り続けさせる運動量とインテリジェンス、そして、状況を打開できる攻撃的な才能を求める傾向にある。トッテナムでは、幸いにも、指揮官の理想を遂行できるタレントがいた。デリ・アリだ。

 2019年はコンディション不良や、複数のポジションで起用されたこともあって、やや迷走していたアリだったが、モウリーニョに大役を任せられ、復活を印象付けている。守備では、常に中央のフィルターになりつつ、攻撃面ではパスワークで相手を翻弄するだけでなく自身もボックス内に飛び込んでは得点に絡む。3試合で3ゴール・1アシストとは、あっぱれというほかにない。

 そして、両翼には前任者が好んだゲームメーカーよりも、ソン・フンミン、ルーカス、ムサ・シソコといった個人技で状況を打開できる選手を配置している。これも既存の哲学に基づいた采配だ。

 ここまで紹介した2列目の選手たちと、1トップのハリー・ケイン含む前線4枚は、攻守の切り替えを常に素早く行なうことが求められる。相手が自由にプレーする時間とスペースを与えないことは、モウリーニョ・サッカーを実現するうえで鉄則だからだ。それを実践する下地が、ポチェティーノ政権下で築かれていたのは、ラッキーだったと言えるかもしれない。

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