「観客は“ニッポン”コール。少年たちは西川の虜に」地元ブラジルの記者はU-17日本代表の躍進をどう見たのか?【現地発】

2019年11月05日 リカルド・セティオン

南米以外の国で唯一、多くの観客を動員

ここまで2ゴール・2アシストの西川がブラジルのファンを夢中にしている。(C)Getty Images

 実を言うといまブラジルで行われているU-17ワールドカップは、観客の入りがあまり芳しくない。

 これは大会組織委員会の大きな誤算によるものだ。今大会はゴア、カリアシア、ゴイアニアの3都市で行なわれている。ブラジルでは現在リーグ戦の真っ最中なので、会場にはトップレベルのチームの本拠地ではない町が選ばれたのだ。

 国際試合などめったに見れない町であれば、"少年たち"の試合でも見に行くだろうという目論見もあったのだが、しかしこれは裏目に出た。試合を観戦に行くという文化のない人々は、スター選手がいないスタジアムに足を運ばないのだ。

 ブラジルの試合こそ、1万人を超え、他の南米勢の試合も多少は盛り上がるが、例えばメキシコvsイタリアは1600人、フランスvs韓国戦は700人と、閑古鳥が鳴いていた。

 だが南米以外の国で唯一、多くの観客を動員しているチームがある。それが日本だ。
 
 カリアシアで行なわれた初戦のオランダ戦の観客数は5125人。オランダが先着500人にユニホームをプレゼントするというプロモーションをしたことが、もしかしたら影響したかもしれないが、しかしそのキャンペーンにつられてきた観客たちも、日本の若きサムライたちのプレーに驚かされた。

"ビッグチームのない町"といっても、そこはブラジル。観客は魅せてくれるプレーをするチームが好きだ。若月大和のソクラテスばりのヒールに観客は沸き、成岡輝瑠の股抜きには拍手が起こり、西川潤の果敢に攻めていく姿は、すっかりブラジルサポーターを虜にしてしまった。

 スタンドにはほんの数十人の日本人サポーターしかいなかったが、いつのまにかニッポン、ニッポンの声援がスタジアム中で沸き起こっていた。無料で配られたオランダのオレンジのユニホームを着た人々までだ。

 この試合をFIFAのテクニカルスタッフはこう評した。

「日本は非常にインテリジェンスのあるプレーをするチームだ。監督は個々の選手の特性を熟知し、それをうまく活かしているように思える」

私もオランダには勝ち目がなかったと思う。日本は、5点でも6点でも取れた気がする。

 だからこそ、次のアメリカ戦(会場は同じくカリアシア)のスコアレスドローは腑に落ちなかった。技術は十分にあるが、メンタル面をまだ上手にコントロールできないのかもしれない。

 元ブラジル代表の正GKで、現在はFIFAのアンバサダーを務めるジュリオ・セーザルもこう言っていた。

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