“リアル”南葛SC・柴村直弥選手兼コーチが説く「関東リーグ昇格という大目標へ必要な勇気」

2019年09月05日 伊藤 亮

「人間心理として、目立っている相手に対しては“倒してやろう”というモチベーションが上がるというのもあると思います」

選手兼コーチとして南葛SCを支える柴村。今シーズンは優勝した昨年より難しいシーズンになる予感があったという。写真:田中研治

「恩返し」と「向上心」という両軸を信念に、自分の経験と知見をサッカーに関わるあらゆる形で還元しようとしている柴村直弥。南葛SCでは選手兼コーチという立場で、自分の信念を具現化している。
 
 プレーヤーとコーチという両側面から見て、現在厳しい戦いの真っ最中である南葛SCの現状を、どのように感じているのだろうか。
 
 インタビュー企画の最終回となる今回は、チームの状態を内と外から分析してもらい、さらに変化してきた部分と不変であるべき部分を冷静に見極めてもらった。
 
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 東京都サッカーリーグ2部から昇格したばかりの昨シーズン、南葛SCはいきなり1部で優勝を手にするという派手な活躍を見せた。だから余計に今シーズンにかかる期待は膨らんだ。しかし東京都リーグ1部に身を置き3年目、南葛SCでは2年目を迎えた柴村直弥選手兼コーチには、監督交代や選手補強など大きな動きがあったチームが難しい戦いを迫られることを予見していた。
 
「昨シーズンと同じようにいかないであろうことは、ある程度予測していたといいますか。開幕戦に引き分けたことでチームも実感したでしょうし、自分もその時に今季のリーグ戦の難しさは話させてもらいました。監督が変わってサッカーが進化したことに対する昨シーズンとのギャップ。さらに新しく加入した選手は、東京都1部のサッカーに加え、これまでと違う環境へのフィットという問題もあります」
 
 前回述べたように、練習時間が日中か夜間になるかで、コンディショニングの難しさはガラリと変わる。新しいサッカーと新しい環境という両面においてフィットしていく必要性。それらと向き合いながら、なおかつ毎試合パフォーマンスを発揮し続けていくのは、確かに至難の業だ。
 
 そして、リーグ戦を戦うことの難しさはチーム内だけにとどまらない。
「東京都リーグのレベルも年々レベルが上がっています。南葛SCのようにJを目指すクラブが増えるにつれ、他のクラブにも元Jリーガーが結構移籍してきています。大学を卒業してそのまま入団してくる選手も増えている傾向にありますね。そして、昨年の優勝という成績を受けて、南葛SCがマークされています。昨シーズンは2部から昇格したばかりで、『どんなチームか探っているうちにやられてしまった』という話も聞きました。でも今シーズンは目立っている中での開幕。人間心理として、目立っている相手に対しては"倒してやろう"というモチベーションが上がるというのもあると思います。実際、南葛SCとの試合を控えた週はみんなでなんとか調整をつけて、いつもより密度の高い練習を行なったという話も聞きました。さらに南葛SCには名のある選手が多いぶん、ネット映像などがあるので情報を収集しやすいという話も聞きました」
 
 当連載で福西崇史監督も安田晃大キャプテンも言っていたが、今シーズン、対戦相手の目つきが違うのは事実だろう。いかに気持ちを強く試合に臨んでいたかは、南葛SCに勝った対戦チームの試合後の喜びようを見ていても十分に分かる。
 
「以上のようなことは事前から予測できました。でも、特に今年から新たに東京都リーグでプレーすることになった選手たちは、話して理解していたつもりでも本質的には感じていくしかないでしょうし、実際にリーグを戦いながら実感しているのが現状です」

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