ミランはなぜジャンパオロを新監督に選んだ? 特筆すべき手腕は…

2019年08月02日 片野道郎

若手重視路線に舵を切った中で。

ミラン新監督に就任したジャンパオロ。(C)Getty Images

 昨年末にアーセナルから引き抜かれる形で、ミランの経営全権を握るCEOに就いたイバン・ガジディスは、昨シーズン終了後の5月29日、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙のインタビューに応じて、就任後初めてマスコミに登場すると同時に、今後の経営方針について一切の「粉飾」なく率直に話している。
 
 ポイントは、FFPの枠内で経営を立て直してCLの舞台で主役を演じられるチームを築くため、当面は緊縮財政を基本に伸びしろのある若い(そして比較的移籍金が低い)タレントを獲得し、時間をかけてチームを再構築していく方針が明確に打ち出されたこと。「空約束をしては裏切る時代はもう終わった」というコメントに、新経営陣のポリシーがはっきりと示されている。
 
 実際、すでに獲得した新戦力(DFテオ・エルナンデズ、MFラデ・クルニッチ、FWラファエウ・レオン)、獲得が内定している選手(MFイスマエル・ベナセル、DFレオ・ドゥアルチ)、そして狙っている選手(FWアンヘル・コレア、MFデニス・プラートなど)は、すべて伸びしろを残した25歳以下のプレーヤーだ。
 
 さらにガジディスCEOは、「伸びしろがある若いタレントを獲得するのは、成長させて売るためではなく、彼らとともに未来を作るため」と語った。つまり目先の勝利よりも数年後を見据え、選手とチームを育てながら戦うという方向性だ。
 
 したがって今夏に退任したジャンナーロ・ガットゥーゾの後を継ぐ新監督には、出来上がったチームを率いて目先の結果を出すタイプよりも、明確な戦術コンセプトの中で選手を成長させながらチームを強化するタイプが求められた。
 
 シモーネ・インザーギ(ラツィオ)、エウゼビオ・ディ・フランチェスコ(元ローマ/現サンプドリア)、ロベルト・デ・ゼルビ(サッスオーロ)、レオナルド・ジャルディム(モナコ)などの候補の中からパオロ・マルディーニTDがマルコ・ジャンパオロ(元サンプドリア)を選んだのも、その観点で最適だと判断したからだろう。
 

次ページ純粋なゾーンディフェンスの先駆的な存在。

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