【横浜】腕章にその想いを託して――苦楽をともにしてきた天野純と喜田拓也の固い絆

2019年07月09日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

寂しさはあるけれど…

念願の欧州移籍を叶えた天野(左)。喜田(右)は「F・マリノスを背負ってやってきてほしい」とエールを送る。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 今季の横浜F・マリノスのキャプテンには、扇原貴宏、天野純、喜田拓也の3人が就任した。そのうちのひとりである天野が今夏、かねてからの夢だった欧州移籍を叶える。1年間の期限付き移籍でベルギーのスポルティング・ロケレンへと旅立った。
 
 移籍前のラストマッチとなったJ1リーグ第18節のホーム大分戦に、天野は先発フル出場。ダブルボランチの一角として攻守に奮闘し、1-0の勝利に貢献した。
 
 試合後の壮行セレモニーでは「行ってきます!」と笑顔を見せていた天野の海外挑戦について、同じキャプテンの喜田に聞いてみる。第一声は「うーん……やっぱり、仲間としては寂しいですよ」。それは嘘偽りのない、正直な気持ちなのだろう。
 
 ともに横浜の下部組織出身。喜田は2013年に横浜ユースからトップ昇格。1年後、横浜ユースから順天堂大に進学していた天野が大卒ルーキーとして加入する。それからの数年間、ふたりはチームメイトとして苦楽をともにしてきた。天野は以前、「試合に出られない時期、キー坊(喜田)とよくランニングしていた」と語っていたことがある。それを喜田に伝えると、そうそう、といった具合にうなずく。
 
「自分は2年目ぐらいまで全然(試合に)出られなくて、純君も同じような状況で、境遇が似ていたんですよね。メンバー外の練習も一緒にたくさんやって、みんなが帰った後、筋トレも一緒にやったし。そんな自分たちが今年は、F・マリノスのキャプテンに指名してもらって、そこは当然、感じるところはあるし、純君がどんな想いで、今年だけでなく、ずっとやってきたかは分かっているつもりでいるので」
 
 だからこそ、寂しさと同じぐらい、応援したい気持ちでいっぱいだ。
 
「寂しさはあるけど、純君の(サッカーに対する)姿勢や、夢も聞かせてもらっていた身としては、チャレンジしてほしいと思った。だから、思いとどまらせるつもりは一切なかったし、移籍するからには心おきなく行ってほしかった」
 
 今季から伝統の「10番」を背負うキャプテンが、シーズン途中に優勝争いに絡むクラブを離れる。天野にとっては苦渋の決断だったはずだが、喜田はどこか嬉しそうでもある。
 
「今いるチームメイトやスタッフを信頼して、旅立ってくれると思う。それは嬉しいこと。そういう信頼関係がある。純君も、僕らに託してくれた。だから行くからには、F・マリノスを背負ってやってきてほしい」

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