“高校サッカー”で育まれた、なでしこ守護神・山下杏也加が好守連発! 一方で「もったいない」と危惧した懸念材料が敗因にも…

2019年06月21日 西森彰

イングランド戦先発11名のうち7名は高校女子サッカー出身者が占める

今大会でなでしこジャパンの守護神を務める山下。好セーブを連発してチームを助ける。(C) Getty Images

[女子W杯グループリーグ第3戦]日本0-2イングランド/6月19日/ニース
 
 なでしこジャパンのグループリーグ最終戦は、ニースでのイングランド戦。高倉麻子監督が、この日、先発11名に選んだうちの7名は、高校女子サッカー出身選手だった。近年では、稀にみるような偏り。この日の高体連OGオールスターも、対戦順やピッチへの慣れでイングランドに分がある中、よく戦った。
 
 ゴールキーパーの山下杏也加も、そんな高体連出身のひとり。2011年ドイツ大会の優勝メンバー・丸山桂里奈の出身校でもある東京都の村田女子高で、フィールドプレーヤーからゴールキーパーに転向したのは、有名な話だ。
 
 同校は、山下が3年時のインターハイで、同校始まって以来の全国優勝(日程変更により決勝戦が行われず、日ノ本学園と両校優勝)を果たしている。だが年代別代表候補にも選ばれていた山下は、その海外遠征に参加するため、同大会を途中離脱。山下がプレーしたのは同大会の初戦、しかも雷雨中断で、試合の続きを翌日に持ち越された試合の前半だけ。それでも、村田女子の指揮を執る矢代浩平監督は、チームにとってのマイナス材料を受け入れ、代表活動に送り出した。
 
 その後、日テレ・ベレーザの特別指定選手となった山下が、ベレーザの遠征に従い、村田女子にとって重要な公式戦を欠場した。その時、矢代監督は山下を怒ったそうだが、それは高校の公式戦を選ばなかったからではなく「彼女が選んだベレーザの試合に出場できなかったから。向こうに行くなら試合に出ろよ、と」(矢代監督)だった。
 
 いくら山下が身体能力に優れ、努力を惜しまなくても、高校からGKとしてスタートして、なでしこジャパンの守護神にまで登りつめるのは至難の業だ。山頂への道のりをショートカットできたのは、矢代監督や、優れた指導力のあるGKコーチたちに巡り合えたことも大きかったと言えるだろう。今大会は、そんな指導者たちに恩返しとも言える好プレーを見せている。
 

次ページまるでベテラン選手のように浮かない顔色を見せていた山下。その理由は?

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事