「なぜあのスタメン?」「失われた60分間」ポジティブ視点の英国誌記者も今回ばかりは…

2019年03月28日 マイケル・プラストウ

物足りない。英語で表現するなら“フラット”が適当

ボリビア戦の勝利に森保監督はいかなる収穫を見出したのか。プラストウ記者は珍しく懐疑的だ。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 森保ジャパンがボリビア代表を1-0で下した一戦。いったいどう評価すればいいのだろうか。

 ひとつのゲームとしてジャッジすべきか、新戦力を含めたテストの場として見るべきか、長期的な視野に立って捉えるべきか。あるいは、そのすべてを総合的に判断して評するべきなのか──。

 森保一監督はチームがアジアカップ決勝、コロンビア戦と2連敗を喫していたにもかかわらず、スタメンを総入れ替えして、ベストメンバーを組まなかった。勝利を最優先した決断ではない。それでも白星を掴めたのは幸運な面が多分にあったし、指揮官の精神的な強さを証明するものでもあっただろう。その点については見事だったと称えるほかない。

 ただ、試合として評価するなら、キックオフからの60分間はあまりに物足りなかった。これではとうてい世界では、コパ・アメリカでは通用するまいと、そう言わざるを得ない代物だった。

 英語で表現するなら"フラット"が適当だ。この言葉には複数の意味があり、元気がない、単調で活発的ではない、また、タイヤの空気や飲み物の炭酸が足りないときにも使われたりする。後半半ばまでの日本代表のパフォーマンスは、そのいずれにも該当した。得点の匂いや気配はまるで漂ってこなかったし、結果的にひとつの結論を導き出したに過ぎない。ベストメンバーはベストメンバーである、という厳然たる事実をだ。

 
 あからさまに内容が好転したのが、最後の30分である。中島翔哉、堂安律、南野拓実、柴崎岳の4人はやはり違いをもたらした。左サイドバックに入った佐々木翔も及第点以上の出来だ。ベンチからピッチに投じられた面々は、実に動きが鋭利で冒険的、かつ活発そのものだった。中島が目の覚めるような得点を決め、チャンスも連続的に創出し、胸のすくような勝ちっぷりでゲームを押し切ったのである。誰もが観ていてワクワクしただろう。

 いくら代表デビューや初先発の選手たちが複数いたとはいえ、ここまでパフォーマンスに差が出てしまっては元も子もない。新体制がスタートしてからアジアカップを経て、チームの骨格は形成されつつあったはずだ。コロンビア戦でもその確かな歩みを再確認させてもらった。ならば、効果的に新戦力をスカッドに取り込もうと考えるならば、スタメン総入れ替えという選択は誤りではなかったか。かえすがえすも、もったいない「60分間」だった。

次ページ乾はあらためて、重要な人材だと実証した

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