【小宮良之の日本サッカー兵法書】 世界でも稀な注目度が「高校以上プロ未満」の原石に与える影響

2019年03月10日 小宮良之

「選手権」は選手を劇的に変えることもあるが…

今年の決勝も54,194人が現地観戦。かつて日本サッカー最大のイベントといわれた高校選手権は、今でも冬の風物詩として大きな関心を集めている。これにより、選手たちが得るものも決して少なくはないが……。 写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 2019年も、高校選手権の決勝(青森山田×流通経済大柏)には6万人近い観客が集まったという。
 
 ユース年代の大会としては、世界的に見ても例外的な熱狂と言える。欧州では、この年代のチャンピオンズ・リーグといわれる「UEFAユースリーグ」ですら、数千人の観客を集めることは簡単でない。
 
 しかも高校選手権には、クラブユースは参加していない。ユース年代でも、限られた団体に過ぎないのである。にもかかわらず、これだけの人気を博しているのだ。

 
「やっぱり、選手権を経験したかった」
 
 Jリーグが創設されてから20年以上が経つが、相変わらずそう語る選手は絶えない。クラブユースに所属しながら、あえて高校の部活に"移籍"する場合もある。「選手権」は、今もひとつのブランドと言えるだろう。
 
 クラブユースは充実したハード面を備え、好待遇で地元の一番手の選手たちを集められる。にもかかわらず、現在も代表選手の数は、高校の部活出身者とほぼ同数。育成面で、部活は結果を出しているのだ。
 
 選手権とは、国内における注目度において、同年代最高峰のU-20ワールドカップにも匹敵する大会かもしれない。
 
「5万人の観客に見られながらプレーするのは最高だし、民放でテレビ放送もある」
 
 選手たちは口を揃える。確かにJリーグの試合でも、民放の地上波で放送されることは稀なことだ。その熱によって、選手が劇的な変身を遂げることもある。観客の興奮に、選手がカタルシスを受けるのだ。
 
 その一方で、高校生である彼らに、想像以上の負荷がかかる場合がある。注目を浴びることになった選手は、大抵は実力以上の存在として、周りから担ぎ上げられる。「超高校級」「○○二世」「平成の怪物」など、あらゆる美辞麗句を与えられる。
 
 しかし、実像はなかなかそれらに追いつかない。

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