「世界最高峰のCF」ケインを徹底分析。技術的、戦術的、メンタル的な強みとは?

2019年02月28日 ロベルト・ロッシ

「戦術的判断力」が抜きん出ている。

今や「世界最高峰のCF」と謳われるケインの持ち味とは? 写真:REUTERS/AFLO

 トッテナムに所属するイングランド代表FWのハリー・ケインは、現時点において世界最高峰のCFのひとりだ。ストライカーにとっての最重要タスクである得点力において卓越していることはもちろん、ビルドアップへの貢献、チャンスメークとアシスト、そして守備の局面への参加と、求められるすべての仕事を高いレベルで担う。
 
「ゴールを決める」だけならば、ケインと肩を並べるCFは五指に余る。とはいえCFとしての総合的なクオリティーにおいて彼と争うことができるのは、ロベルト・レバンドフスキ(バイエルン)くらいだろう。
 
 ケインは、圧倒的なフィジカル能力を持っているわけでもなければ、卓越したテクニックの持ち主でもない。188センチ・76キロという大柄な体格に優れたコーディネーションとボディバランスを備えているがゆえ、フィジカルコンタクトには強いが、身のこなしはエレガントではあるがやや重い。
 
 狭いスペースにおけるクイックネスやアジリティーも平均レベル、オープンスペースにおけるスピードも初速、加速ともに際立っているとは言い難い。テクニック的にも、左右両足のセンシビリティーに優れ、パスやシュートの精度は高いが、ファーストタッチを含むボールコントロール、1対1のドリブル突破など、フィニッシュの局面で決定的な違いを作り出す技術は際立っているとは言えない。
 
 では、ケインを世界での指折りのCFたらしめているものは一体何なのか。それは状況を的確に読み取り、周囲との連携の中で最適なポジショニング、動き、プレー選択を行なう「戦術的判断力」だ。
 
 ケインは常に最前線中央にポジションを取って敵CBと駆け引きし、攻撃の基準点となる古典的なタイプのCFとは一線を画している。ボールが遠くにある時から、プレーの展開を先読みして1つ先、2つ先の状況でチームが有利になるような動きを見せる。
 
 敵の陣形を間延びさせるために裏のスペースを狙う、縦パスを引き出すために敵2ライン(DFとMF)間に下がる、サイドに流れて味方が入り込むスペースを作り出す、あるいはサイドチェンジを引き出すなど、その動きは常にチームが狙っているプレーの展開に連動している。
 

次ページ一見すると「9番」だが「10番」的な資質を。

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